しん

パーフェクト・ノーマル・ファミリーのしんのレビュー・感想・評価

3.8
細部へのこだわりと視点の面白さ、リアリティを補完する演出が高度に絡み合った名作でした。
父親が「女」になっていく過程における娘の葛藤が中心ですが、父親の仕草や社会における細かな生きづらさ、途中でホームムービー風の映像をいれることでリアリティを一段あげる演出など、どこをとっても素晴らしい出来だったと思います。しかも100分というコンパクトさですし。

白眉はエマの周りの変化の早さの演出とそれに戸惑うエマでしょう。理解するより遥かに早く訪れるイベントが江間を苦しめます。それは姉の理解の早さであり、父親の決断力であり、母親の離婚への決断の早さです。どこに不満をぶちまけていいのか分からないエマの気持ちが、ひしひしと伝わってきました。

細部へのこだわりも素晴らしく、ボーリング店で27cmの靴といって少し驚かれたり、少しだけあったママ友には「真実」を明かさなかったり、エマがサッカーの試合中にやるせない想いをファールで表現してしまったり。

サッカー好きとしては、デル・ボスケがレアルマドリードを率いてた頃かと懐かしくなることもありました。本当に良くできた作品だったと思います。
しん

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