JunichiOoya

終わりの見えない闘い~新型コロナウイルス感染症と保健所~のJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

5.0
東にワイズマン在れば西に宮崎信恵が在り! まさに、『ボストン市庁舎』に並び立つ『中野保健所』畢生の物語を拝見させていただく。

詩人、塔和子さんを描いた『風の舞 闇を拓く光の詩』はもちろん見ているけれど、事前にこの映画と結びつかず。そうなんだ、信念の映画人、映像作家なんだ、この方は。
舞台挨拶でご本人のお話を聴いて改めて畏敬の念を…。

①組織として見事に機能していること。40年以上給与生活者として暮らす我が身として、こんな素敵な組織を初めて見た。
現場のキャリアバリバリ現有勢力保健師たちは言うに及ばず、所長も課長も係長も、引退して教育の場でセカンドキャリア全う中応援に駆けつけたベテランも、指示だけ出されて(この辺りは流石お役所流)訳も分からず応援部隊に入った保健師たちも、新卒出来立てホヤホヤのヒヨコ保健師さんまで‼︎ 皆がそれぞれの職階に応じて完璧に仕事をこなしてる。
とりわけ、所長さんの冷静沈着迅速的確大胆周到なボスぶりにひたすら痺れました。
世の中の組織責任者は、表現こそ御大層だけれど、トップや周囲の顔色を忖度するばかりで、挙げ句の果ては現場責任者(課長たち)に「すぐ対応するように!」って、自己責任での判断実行皆無の輩で溢れかえっておりますから。

②現場に、それも何より「行政」の現場にカメラが長期間入ったことについての驚き。宮崎さんのお話では、これも保健所所長のは英断独断即断だったとのこと。
カメラは保健所職員たちに思いっきり寄って映像を切り取るのだが(ま、物理的に部屋が狭いというのもありますが)、その映像が情緒に流れず徹頭徹尾冷静で淡々とした語り口。職員たちの地頭の良さというか、教養(持って生まれたインテリジェンスと見受けられた)がそのリズムを主張していたことも大きかった。

Facebookで井上淳一さんが「今年のイチオシ!」と語っておられたのだけれど、正直ベタすぎるタイトルに尻込みしかけていたのもほんとのところ。

いやあ、これは皆さんにおススメです。
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