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フタリノセカイのmatsumuraのレビュー・感想・評価

フタリノセカイ(2021年製作の映画)
3.4
【要約3point】
①行間を読ませる映画
②演出と脚本とキャストそれぞれに見所あり
③最後の2場面は蛇足かも

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1人の女性とトランスジェンダーの彼(身体は女性で心は男性)の10年間を描いた物語。

LGBTQを扱う作品は日本でも増えてきていますが、意外とT(トランスジェンダー)をメインに据えた邦画はあまり見たことがなかったので新鮮でした。
ゲイやレズよりも少し複雑なので、あまり知識がない人は事前にトランスジェンダーとは、というところを調べておくと良いと思います。

全体的に穏やかな空気が流れる映画ですが、しっかりと感受性のセンサーを機能させて向き合わないといけない作品です。
大きな出来事や登場人物の感情の移り変わりが明確に描かれていないケースが多いため、受け身で見てしまうと「どうしてこうなった?」と疑問に感じる可能性が高いと思います。
行間を読ませる映画だなと思いました。

印象的だったのはカメラワークと脚本(伏線回収)です。

カメラワークについては、登場人物の感情が爆発するシーンをあえて背後から撮ったり、肝心な部分をなかなか正面から写さず、ここぞという時にバチッと見せる、といったような工夫が随所に見られました。そのどれもがちゃんと意味を持っているように感じられ、見ていて非常に心地良かったです。

脚本については、前半に何気なく出てきたセリフやシーンが後半で活かされているような部分がいくつかあり、その回収(活かし方)が鮮やかでした。

キャストについては坂東龍汰さんが非常に良いです。
身体は女性で心は男性という難役も違和感なく演じられており、シーンを追うごとに本当にトランスジェンダーの当事者の方のように見えてきました。素晴らしかったです。
(舞台挨拶で仰っていた「役作りに時間を掛けられた」というのも納得です)
また、元々綺麗な顔なのですが、何度かある寝顔のシーンやクッションに顔をうずめるシーンなど、男性ながら「美しい」と形容するのがぴったりでした。
(撮影は2019年6月らしいので、やはり少し若めですね)

映画全体の中で素晴らしいシーンを一つ挙げるとすれば、主演2人とゲイの方の3人のシーン。ある大きな決断を下すのですが、非常に引き込まれました。

逆に映画最後の2場面は蛇足のように思えました。
紙吹雪のシーンで終わっておくと「フタリノセカイ」というタイトルもより響いたように思います。