ボギーパパ

さがすのボギーパパのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
4.0
2022-10 テアトル新宿

まだまだ出るぞ〜でお馴染み『岬の兄妹』の監督、片山慎三さんの最新作にして商業映画デビュー作。『岬の兄妹』は社会的弱者にスポット、フォーカスを当て、その生活や人間そのものを描き出した。いったい何を観せられているのか、なんじゃこれはと思うばかりの悲惨にして壮絶な作品であった。この監督、ただものではない。ポンジュノさんの下でお仕事もされていたようで共通点も見出せる。まだまだ(怪作・傑作が)出るぞ〜!

さて本作においては、、、やはり社会的弱者に焦点を合わせ、何かを「さがす」人々を、実際にあった事件に断片的に重ねて描いている。娘は失踪した父を探し、父は指名手配犯を探すといって失踪し、世の中には死に場所探している人がわんさかいて、一緒に死んでくれる人を探している人もいる。このタイトル、単純にして明解であり、その分深淵なものでもある。生きることは探すことなのか・・・

それぞれ登場人物は何かを探している。
原田智役の佐藤二朗さんは当て書きだそうで、これは他の人には出来ないし、考えられない。探されて探すこの人は露悪的でもあるが娘への愛は、家族への愛は深い。それゆえに、、、

楓役の伊東蒼さん、『空白』でも酷い目に遭い、『湯を沸かすほどの熱い愛』でも散々な目に遭う、なんと薄幸、悲運が似合う?俳優なのか。今作は悲運ながらも芯のある強い娘を好演。素晴らしい演技!困った時にへの字になる眉がかわいい。

山内照巳役の清水尋也さん、死んだ目させたら日本屈指だろう!ガラス玉の様な瞳が印象的。こういう役者が必要なんだよなぁと思わせる。

ムクドリの森田望智さんのずけずけものいう感じも良いし、何と言ってもちょっと出てくる西成の人々がまたなんともいえない良い味を出している。
あの警官「この辺の大人で酒飲まないのなんかおるかいな、野良猫でも飲むんやで」的な感じや、自転車借りるお店の人の「ちゃんと返しときや〜」的なセリフがこの街のカオスを表しているのか、本作このカオスな街を舞台にしたこと自体が、そもそも狙いでありそれは大当たりなのだろう。この話、西成だからこその話なのだ。

一方、展開においては時制を遡らせることにより、何故そうなったかを種明かしする手法。これは昨今の韓国ドラマや映画でよく見られるが、ここはポンジュノさんとの関係性からか。パーツがぴたっと見事にハマっていく爽快感がある。

今後も怪作・傑作がまだまだ出るぞ〜という事に期待して楽しみにしております。
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