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さがすのkatsuのネタバレレビュー・内容・結末

さがす(2022年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

今年1位の映画がもう決まってしまったのではないか。佐藤二朗さんの圧巻の演技と緻密な脚本、上質なフィルム・ノワールが邦画界に現れたことを嬉しく思う。

特に震えたのはやはり佐藤二朗さん演じる智が妻を苦しみから解放するために首を絞めて殺そうとし我に返って発狂するシーン、そこだけ音声はなく音楽が流れているのだが自然と涙が溢れた。また、森田望智さん演じるムクドリと智が公衆トイレで泣いてるのか笑ってるのか分からないシーンも細やかな感情の揺れが見えて圧倒された。清水尋也さんや伊東蒼さんの演技も刺激的で一貫してキャスティングが素晴らしい。

時系列をかなり並び替えているがそれにより分かりづらくなることはなく、鑑賞者の興味を常に刺激し続ける。先の全く読めない展開も含めて脚本の完成度の高さが窺える。

オープニングのシーンで「母なる証明」を思い出した。ラストシーンでピンポン玉が無くなってもラリーし続けた親子の想いとは。流石の演出と画作りはポン・ジュノ監督の元で日本人で唯一助監督を務めた片山慎三監督の手腕だろう。佐藤二朗さんも日本のソン・ガンホにしか見えなくなってきた。

苦しみからの解放による殺人は救済なのか。重いテーマがピンポン玉の跳ねる音と共に脳裏に焼き付いている。
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