ラダ

さがすのラダのネタバレレビュー・内容・結末

さがす(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

娘の原田楓を演じる伊東蒼の演技をみるのは「空白」以来二度目。その前作では、序盤で彼女の演技は終わってしまう訳だが、今作ではしっかりと堪能させてもらった。まあ「空白」のせいで、序盤の街中を駆け抜けるシーンは別の緊張感があったのだが。

子どもらしい狡さや大人への苛つき、ダメな親父への無償の愛。父を「さがす」シーンでは描かれなかった(いや、しっかり語って欲しかったが)がしっかり感じる自己の成長。これらを演じ切ったからこそ、ラストのシーンに説得力が生まれる。脚本的には正直穴だらけな印象もあるのだけれど、それらを端に追いやってしまうほどの熱演だった。

そして、自らが「パブリックイメージと違う」と語る父・原田智役を演じた佐藤二朗は、まさにその通り。口数の少ない色々な意味で不安定な大人を演じた。いつものあの感じは正直食傷気味だったので、新たな顔に好印象。名無しこと山内役の清水尋也のサイコパス感といい、キャスティングが素晴らしい。

座間9人殺害事件をベースにしたのであろう犯行シーンについては、白いソックスへの執着や、京都で起きたALS患者に対する嘱託殺人事件の要素などなど、少々話題を雑多に盛り込み過ぎたかなという印象。嫌でも目立つクーラーボックスも含めてちとくどい。でもまあよく練られた秀作です。

ただひとつ。片山監督を有能な監督だと思うからこそ、「ポン・ジュノ監督の弟子」的な論評はあまり見たくない。本人によるセルフプロデュースなのであれば勝手にすればイイのだけど、この売り方は未来を感じない。商業映画が才能を潰さないように祈るのみだ。
ラダ

ラダ