たく

フリークスアウトのたくのレビュー・感想・評価

フリークスアウト(2021年製作の映画)
3.8
面白かった。ポスターにある「超人サーカス団vsナチス・ドイツ」の謳い文句に「アイアン・スカイ」みたいなおバカ要素を期待したんだけど、そんなことはなく立派な娯楽作品に仕上がってた。一度離散したフリーク達が結束を取り戻すという人間ドラマもしっかり見せる。ただ、ユダヤ人狩りという名目はあるにせよ、ドイツと同盟国のはずのイタリアが何故かドイツ軍に支配されてる感じの描き方はめちゃくちゃだったね。

第二次大戦下のイタリアで、サーカス団の芸を見せる冒頭のめくるめく映像にまず引き込まれる。ここで登場する大道芸人達がみな特殊能力を持ったフリーク(異形者)であることが示され、いきなりドイツ軍の攻撃を受けて(同盟国なのに何故?)、彼らが離反してからのそれぞれの旅路が描かれて行く。

本作はフリークスがその特殊能力を駆使してナチス・ドイツに立ち向かうという単純な話ではなく、その能力のせいで悲しい過去を持つマティルデが自己を開放して受け入れるまでの成長物語を軸に、いったん関係が拗れた仲間達が結束を取り戻す話になってた。そこにナチス側にいながら自ら異形であるドイツ人のフランツが、コンプレックス解消のために総統にフリークスを最強の武力として差し出そうと奔走する姿が悲しく対比されて、人間ドラマとして見応えあった。

フランツの部屋で唐突にスマホのデッサンが出てきて時代設定に混乱したんだけど、その後ちゃんと理由がわかるのが上手い。戦争の結末を知ってるフランツが運命に抗おうとするのが、己のありのまま(6本指)を受け入れられないことと重ねられて虚しく描かれてたね。己の能力を頑なに封印し続けたマティルデが、終盤ついに目覚めるところは感動的。レジスタンスとドイツ軍の戦いとなってからは少々とっ散らかった印象。
たく

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