みきちゃ

ロスト・ドーターのみきちゃのレビュー・感想・評価

ロスト・ドーター(2021年製作の映画)
4.2
美しくて開放的なギリシャで過ごす夏のバカンス。ビーチにいた若い母親と幼い娘を見て、育児中だった自分の過去を思い出すレイダ。

理想的なバカンス時間を過ごしていると次々入る邪魔。控え目に言ってしぬほどウザい。じわじわ積み重なるストレス。母親業の現実ってこんな感じだってことを伝えたいんだろうなーと遠い目で眺めてた。

可愛い子供。保護者としての責任。キャリアとの両立の難しさ。女としての自我。どれもありふれたテーマと葛藤。でも、またかよーってならないのは母親を演じたオリヴィア・コールマンとジェシー・バックリーとダコタ・ジョンソンの説得力ある演技の賜物。泣いてるあの子にこうしていたら。もっと甘えさせてあげればよかった。あのお願いをきいてあげればよかった。などなど、きっとどう行動したって後悔がつきまとうものなんだろう。

個人的には"三年"の間の心情とその終わりと続きがどんなかんじだったのかをもっとみたかったのに、台詞三行くらいで終わってて…。説教じみた先輩ママキャラが不在なところはめっちゃ好感。

柳楽くんの映画くらいのネグレクトぶりだったらキツイぞ…とめちゃくちゃ身構えて挑んだからなのか、色々あったわりには全然ハッピーなほうだと私は受け止められたなのかノーダメージで済んだけど、ほとんどホラー映画と受け取る母親や母親予備軍もいるはず。子どもが三人いるオリヴィア・コールマン。製作総指揮兼主演女優でこの役と向き合ったの素敵。

マギー・ギレンホール、素晴らしい監督デビュー作でした。演出センスがいかつい。いつかきっとアカデミー賞の監督賞部門に現れる。観賞後、このタイトルであることを考えたらやっぱり本作は救いの映画にあたると思った。親はみんな誰かの子供。子供は幾つになっても、親にとっては子供。肯定も否定も感じられなかったことに、心からありがとう。
みきちゃ

みきちゃ