とらキチ

パワー・オブ・ザ・ドッグのとらキチのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.3
メタファー。特に性的な意味合いのメタファーの連続。物語序盤で「あっ🤭」と気付いたら、以降ずっとソレ系統にしか見えなかった。実際そうなんだろうし。
マッチョイズム全開なストーリーなのかと思いながら観ていたら、急に思わぬ方向に展開しだし、予想外の着地点だった。パワー・オブ・ザ・ドッグの喩えにゾワゾワする。
カウボーイってやっぱりそっちの方になっちゃうんだなぁ…とか思ってたけど、どうやらフィルという人は、元々そちらの指向の人のよう。社交性カリスマ性が高く、イェール大学を出ている秀才なのに、ど田舎で牧場を営んでいるというのは、きっと東海岸の都会の社会の中では、当時その性的指向が受け入れられなかったということなのではないかと想像される。そんなフィルを繊細に演じたベネディクト・カンバーバッチ。最近彼の出演作を立て続けに観ていて、その役作りの凄まじさから、どの順番でどの作品に取り組んでいたのか非常に気になる。
対するピーター。フィルとは、互いに心の奥底で同族嫌悪みたいなものがあったのかとも思わされる。フィルは一瞬ピーターに心を開きかけたけど、ピーターは決してそんな事は無かった、ということか。あの序盤の出会いの時点から、既に2人の運命の流れは決まっていたと言えるのでは。演じるコディ・スミット=マクフィーの得体のしれないサイコパスな雰囲気が良かった。母親役がキルスティン・ダンストで、彼女が「ピーター」と呼んでいるとニヤリとしてしまう。そんなキルスティン・ダンストと実際にも夫婦で今回夫婦役を演じているジェシー・プレモンス。もう最近この人がとてもクセになる!あのマット・デイモン顔から、あの腹回りの具合から、何って訳じゃないけど、とにかくクセになる!お芝居も上手いし。
序盤からメタファー含め、とても丁寧に描かれているので結構集中して観ないと、何がなんだか…になりかねない作品。今回劇場鑑賞だったから良かったですけど、ながら見では、確実に置いて行かれる事必至な感じの作品。
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