調伏系V魔虚羅

パワー・オブ・ザ・ドッグの調伏系V魔虚羅のレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.0
威圧的だがカリスマ性に満ちている牧場主。弟の新妻とその息子に対して冷酷な敵意を剥き出しにするも、やがて長年隠されてきた秘密が露呈し始めてゆく。
”有害な男性像“に囚われ続け、弟に半依存的な牧場主の男。露になる本心、剥き出しになる人間の脆弱さ、立ちはだかる西部の倫理。何故、牧場が舞台で犬なんぞ出てきすらしないのに題名が「パワー・オブ・ザ・ドッグ」なのか。その題名すら伏線となっている脚本の出来はまさに見事だ。
有害な男性性へのヘイトを向けた、所謂現代的にアップデートされた新しい西部劇の視点なのだが、まさかトーマス・サヴェージ著の原作本が出版されたのが1967年というのは驚きだった。その時代の映画を挙げるならば『荒野の7人』『夕陽のガンマン』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』等があるが、60年程前に既にこのような視点で現代にも通ずるメッセージを孕んだ西部劇を世に送った事が先見性と鋭い観察眼の凄まじさを感じた。
調伏系V魔虚羅

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