さうすぽー

パワー・オブ・ザ・ドッグのさうすぽーのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
3.1
自己満足点 61点

去年の段階から全米の数々の賞を受賞しており、アカデミー賞の最有力作。
明日はアカデミー賞という事で、それに間に合わせるよう観賞しました!


1920年代のアメリカ/モンタナ州を舞台に、女性蔑視者の牧場主フィルと弟に嫁いだ母子家族の対立や関わりを描いた話。
一応西部劇ではあるけど銃撃シーンは一切ないドラマ作品です。しかし、どことなくスリラー感が強くもあります。

女々しさのあるピーターという息子と共に嫁いだローズは、女性蔑視者のフィルと係わることでかなりストレスを抱えてしまうわけですが、そこの対立場面が何とも秀逸。
単にフィルが説教臭くミソジニー発言を直接ローズ浴びせる訳ではなく、自身の奏でるバンジョーや口笛等で威嚇行為を行うので、より異様で不穏な感じが出てきました。(しかも二人が言葉で会話する場面はほとんど無い)

また、撮影はやはり素晴らしい!
今回のアカデミー賞にも撮影賞でノミネートされていますが、モンタナ州の大自然や牧場を美しく撮られており、登場人物達の映し方もかなりこだわりを感じました。

また、フィルを演じたベネディクト・カンバーバッチも見事!
女性蔑視者という複雑な役どころを異様で不気味に演じ、なおかつカリスマ性も感じられました!

音楽も西部劇らしい音色を使いながら不協和音にも近いメロディやコードを使うことで不穏さを漂わせていました。


...という感じで映像面や技術的な面も描いてるテーマもしっかりしてるので絶賛するところです。

ただ、自分としては本作にそんなに心が動かなかったし観た後も「へー凄いね」くらいの軽い心情だったのが正直な感想です。


恐らく問題は、「驚き」があまり無かったことですかね?
この映画で描いているテーマは数多いです。
男性優位社会への批判や女性蔑視、そしてLGBTQといった要素がありました。
ただ、そういった社会性のテーマを描くことに注視しすぎているようにも感じてしまい、登場人物への愛着の持たせ方等が削がれているように感じます。
実際、気に入った登場人物は少なかったです(強いて言うなら息子くらい)。

不穏感はある程度楽しめたものの、ストーリー進行はわりかしダラダラとしていて、特に前半は退屈でした。

「ラストが衝撃」という声もありますが、個人的には意外性はあったものの、正直そんなに驚きませんでした。
ネタバレのギリギリ範囲で言うと、あの人物ならヤりかねないなと最初から思ってたので、驚きがそんなに無かったです。


アカデミー賞の最多ノミネート作品ですが、個人的には今のところ作品賞候補では一番下の順位です。