翔海

パワー・オブ・ザ・ドッグの翔海のレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
3.5
大牧場主としての孤高な生き様とプライド。

1925年のモンタナ州。フィルとジョージのバーバング兄弟は牧場主として成功をしていた。いつものように兄弟はたわいの無い会話をしていたが、弟ジョージの様子はどこかおかしいようにも思えた。兄のフィルは亡き師ブロンコヘンリーのことを強く尊敬しており、今の自分が成功したのはブロンコヘンリーのおかげと忘れずに肝に銘じていた。そんなある日、ジョージは立ち寄った宿の未亡人ローズと結婚するとフィルに告げた。フィルとしては金銭目的で利用されているとローズと息子ピーターを毛嫌いしていた。フィルの暮らす屋敷にローズも住むことになるが、度々フィルからの粗暴な振る舞いと嫌味を受けて次第に抑えていた酒にも手を出してしまう。大学に行っていたピーターは夏休みになると牧場に帰ってくるがその頃には母ローズはアルコール依存性になっていた。そうなってしまった原因のフィルを恨んでいたピーターだったが、ある日を堺にフィルはピーターに色々なことを教えるようになる。急に変わったフィルにはある秘密があった。

崇拝する余り歪な愛の形に変わってゆく。
フィルは師であるブロンコヘンリーに対する崇拝の気持ちは誰よりも強かった。自分たちが牧場主として成功したのは彼のおかげでもあるが、フィルには誰にも打ち明けていない秘密があった。それはブロンコヘンリーの遺品を肩身離さず持っていたり、彼のヌード写真を宝物のように隠していたりとブロンコヘンリーに対する想いが強すぎるのである。それはセクシャルマイノリティに近いものがあるが、その時代にはフィルのように男性を愛する人達は理解されない時代。それを隠して牧場主として皆を束ねるフィルの苦悩。その秘密を知ってしまったピーターに気持ちを次第に許してゆく。

今年のアカデミー賞有力候補とまで言われていた話題作。
結果的にオスカーはコーダが獲得したが、この作品も各紙に有力候補とまで言わせた程の実力派作品だったはず。しかし、それを上回る程のものがコーダにはあったはず。しかし、私はこの作品をまだ見ていたなかったからそれを確かめるためにも鑑賞した。率直な感想は全体的に暗く、内容も疑問が残る点が幾つかあった。それは私の理解力不足からくるものが、あまり万人受けするような作品ではないと思ってしまった。この時代に敢えて1925年代を描き、LGBTQの問題を絡めた作風はあまり見たことがない作品で新しいとも思ったが、それ以上に期待を超えることが出来なかった。だけど、ドクターストレンジの印象が強いベネディクト・カンバーバッチの髭面でカリスマな男を演じた姿は見応えがあった!
翔海

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