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シネマ歌舞伎 桜姫東文章 下の巻のtubameのレビュー・感想・評価

4.3
36年ぶりの再演となった坂東玉三郎・片岡仁左衛門共演による舞台「桜姫東文章」をシネマ歌舞伎化した後編。


下の巻は無実の罪で落ちぶれ病みついた清玄が同じく転落した桜姫と再会し迎える悲劇、桜姫と権助の再会と残酷な事実、御家再興の大団円まで。目も眩むような急展開がわーっと畳み掛けてくる刺激的なエンターテインメントだ。


上の巻の殿上人の世界から一転、リアルな庶民の世界に身を置く清玄・桜姫の境遇の変化は非常にダイナミックで面白い。特に女郎としての下品な振る舞いをしつつお姫様としての生来の高貴な振る舞いが隠しきれず、境を行ったり来たりする桜姫の芝居は一番の見所。玉三郎さんの世馴れて何とも言えない妖しげな美しさを身につけた桜姫が目を引く。
おどろおどろしくも悲哀が滲む清玄と、色気漂う小悪党・権助を演じる仁左衛門さんのあっという間の早変わりも何度観ても素晴らしい。仁左衛門さん大好きなので他にも好きな役は多いのだけど、殊にこの二役は魅惑的だなと思う。
桜姫・権助の並んだ姿は上の巻では絵画的だったけど、下の巻の血が通った感じの二人も良い(いずれにせよ美しい)。


ホラー・スプラッタっぽい刺激的なシーンから、世話物の俗な笑いと爛れた艶っぽさ、THE歌舞伎な勧善懲悪の世界まで、何もかもがぎゅっと濃密に詰め込まれた後編は、時間が過ぎるのもあっという間。


個人的には最後に派手な時代物の世界に再度舞台が戻ってくるところも凄く好き。
前の幕で桜姫万事休す...と終わっても、全部救われてオールオッケー!めでたいめでたい!で半ば強引に締めて、スターが全員揃ってご挨拶に(仁左衛門さんがしれっと三役目で登場するのがまた粋)。今までのは全部お話でした、と一気に観客の目を覚まして賑やかに日常に送り出してくれる幕切れがは~もう最高!って感じ。
歌舞伎のこういう瞬間が堪らなく好きなんだよなー。


今の年齢でこの激しい演目を再演してくれたお二人へ感謝の気持ちでいっぱいだし、映画館で観れて本当に有難い!
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