ゆめちん

ベルファストのゆめちんのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
4.0
ベルファスト
 
作品賞は残念でしたが、アカデミー賞にノミネートされる前からずっと観たかった作品で楽しみに。
 
北アイルランドのベルファストに住む少年バディは、家族と友人たちに囲まれ、映画や音楽を楽しむ幸せな日々を過ごしていた。しかしプロテスタントの武装集団が、カトリック住民への攻撃を始めると、彼の穏やかな日常が一変する。
 
幼い子供の目線で "悲劇な歴史" を描く点は、"ジョジョ・ラビット" に似ているけど、それと大きく違うのは、監督であるケネス・ブラナーの自伝的な要素が入っていること。監督の故郷への思いと、その故郷ベルファストを舞台に映画を作りたかったという気持ちが、作品の端々からひしひしと伝わってくる。
 
基本的に全編モノクロの構成だが、映画やドラマなどの "現実から逃避できる世界" をカラーで表現する演出が面白い。計算されたカメラワークで、紛争中のベルファストに住む人達の暮らしを丁寧に描きつつ、98分という短時間できっちりと纏め上げた監督の手腕はさすが。
 
映画のことになると目を輝かせるバディがとても可愛らしく、演じたジュード・ヒル君は、本作が映画初出演だそうで、初めてとは思えない自然体な演技で、この先が非常に楽しみ。
母親役のカトリーナ・バルフを、スクリーンで見るのは "フォードVSフェラーリ" 以来で、相変わらず美しくて魅力的。
そして祖母役のジュディ・デンチが、最後はあの表情で物語をきっちりと締めくくる。

それにしても、バディが暴動に紛れて持ち帰る "環境にやさしい" という謳い文句が書かれた洗剤。50年以上前に、既にそのような言葉があったのには驚き。
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