けんぼー

ベルファストのけんぼーのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
4.2
今の時代だからこそ、より心に響く愛の物語。

ケネス・ブラナー監督の少年時代を描いた自伝的な作品なのですが、人々の分断や、分断によって隔離された人々の生活、平穏な日々が急に変わってしまう恐ろしさなど、現代の「コロナ禍」そして「ウクライナ侵攻」に通ずる部分があって、まさに「今」の映画だという印象を受けました。

全体を通して主人公の「バディ」少年の視点から物語が進むので、「大人の事情」によって訳もわからぬまま平和な日々を壊されてしまう子供の無力さと、バディの周りの家族の愛情深さや魅力にフォーカスが当てられた作りになっていた点が良かったです。
その分、当時のベルファストの状況を作品を通して詳しく理解することはできない構成になっていますが、当時のベルファストの歴史や社会情勢に詳しくない人でも、なんとなくは理解できるくらいの情報は与えてくれるので特に予習は必要ないです。

そして、作品冒頭に映し出される「今」のベルファストの姿。
そのシーンを入れたことが個人的にとても良いなあと思いました。

過去の悲劇は「フィクション」ではなく「現実」として、現代のベルファストに生きる人々の心にも確実に残っていて、でも、それでも過去の悲劇に向き合いながら、それを乗り越えてより良い世界を作っていこうという前向きなメッセージとも受け取れる良いシーンでした。

戦争や紛争などの争いは「悲劇」しか生まない。ウクライナ侵攻で世界中が心を痛めている現在ですが、そんな現在だからこそ、本作のような作品を通じて過去の悲劇から何かを感じ、学び、そして自分にできる行動をするという姿勢が現代の私たちに必要なのだと改めて実感しました。

2022/3/25鑑賞