観た。
俳優、ケネス・ブラナーの自伝的な映画。
前情報を何も入れずに観た。
冒頭の現在のベルファストの街並み、美しい。
そうかタイタニックが建造された街でもあるのか。壁の向こうへ行くと1969年のモノクロの世界に。映画のオープニングの中でもかなり好きかも。
狭い通りに人、特に子供たちが溢れており、会話が飛び交う幸せな街。全体的にカメラは低い位置で撮影されたシーンが多く、子供の目線で街を眺めているかのよう。
そこで始まる理不尽な宗派の対立による紛争。北アイルランド紛争といえば、マスターキートンでうっすら知っている程度だったけど、街に住んでいる人視点で少しだけ感じる事ができる。映画って本当に勉強になる。
状況が悪化していく中、その影響は受けつつも変わらない日常もある。幼いバディが日々何かを吸収して過ごしている姿は頼もしくもある。キャサリンとの初恋も。
映画やTV、演劇だけカラーで表現されている演出は、バディの見ている（当時見ていた）世界を表現していて、こちらまでワクワクする。
あとは台詞が詩的で哲学的で素晴らしい。特におじいさん。達観しているのか、適度に何かが抜け落ちていて、ウィットに富んだ会話。
数字の書き方のズルを教えられたバディに、でも正解は一つでしょ？と聞かれて「答えが一つなら紛争は起きんよ」と。アイルランド訛りへの不安に「ばあちゃんと結婚して50年だが今も言葉が通じない」いちいち深い。
おじいさんとおばあさん、お母さんとお父さん、それぞれ歪み合う一方でとても愛し合っているのも良い。いつ胸が高鳴ったか聞かれたおじいさんが「茶色いストッキングのお前を見た時だ」と答え、笑い出すおばあさん。このシーンめちゃくちゃ良い！
紛争に巻き込まれ、なんとか逃げて軒先に家族がぎゅうと一つにまとまってやり過ごしているシーンは涙腺が‥
Everlasting Loveを熱唱するシーンは唐突感もあるがニヤニヤしてしまう。
ラストのおばあさんの強い表情のヨリからのガラス越しの表情。
残った者たちと。去っていった者たち。命を落とした者たちへ。
BELFAST
ぐっとくる。
尊い場所で尊い時間を過ごした、
細やかな家族を描いているだけの、とても尊い映画かと。
ケネス・ブラナー製作、脚本・監督
