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ベルファストのよのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
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監督が幼少期を過ごした街を半自伝的に描画した作品として、アルフォンソ・キュアロンの『ROMA』が真っ先に頭に浮かんだが、固定したカメラを用い長回しを主体に時代が持つ空気感そのものを真空パックした『ROMA』と比較し、『ベルファスト』の街や人々を捉えるカメラの画角やモンタージュから発される映像感覚は、正しく現代映画のそれで、叙情的にあの時、あの街で起きた出来事を伝えることには成功しているが、観客をその時代へ同化させる郷愁的な情緒が欠けていた点で、この種の映画として凄く惜しいことをしているように感じてしまった。

諦観的な大人と全容を理解していない子どもに映る世界の見え方の差異や、その溝によって生じる対立と歩み寄り、または当時を彩るカルチャーの嫌らしいまでの引用には素直に「エモさ」を感じた側の人間なので、現代的な撮り方だけがやっぱり引っかかる。白黒で撮影した意図が明確なのは好感。でも、ノスタルジーを押し出したいならオサレな撮り方は不要なはずなんだよなあ、もったいない。
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