ハル

THE GUILTY/ギルティのハルのレビュー・感想・評価

THE GUILTY/ギルティ(2021年製作の映画)
3.8
男が部屋で通話をする。
ただ、それだけのワンシチュエーションで繰り広げられるサスペンス/スリラー。
こういうアイディア勝負の作品は好き。
ある一家が事件に巻き込まれてる事を知る緊急通報センターで業務を行うジョー。
困ったときに誰でもかけられる110番みたいな部署だけど、この話はここから始まりここで完結する。

事件の解決を試みる為、あらゆる手段を尽くすジョー。
最初は正規ルートで助けようとしたけれど、証拠がないから誰にも動いてもらえず…
相棒へ電話をしたり他の同僚へお願いして捜査を進めていく。

本作はワンシチュエーションなので、ジョーの緊迫した芝居が観客を引き込めるかどうかの勝負。
彼の鬼気迫る芝居を見ていると、いま現場で何が起きてるかの解像度が上がっていき、頭の中で映像化されていく。
“本当にやばいことが起きてるんだ!!”という熱量が強烈に迸る。

また、日本と似ているな〜と感じる一幕も。
明らかに事件が起きていて、子供が瀕死の状態にも関わらず「礼状がないから踏め込めない」「越権行為になるからそれは出来ない」という返答ばかり。
よく聞く話だけど、アメリカにおいてもいきなりの踏み込んだ捜査は簡単なことではなく、厳しい現実を思い知る。

物語が進むごとに事件の真の表情が見えてきて、それによってジョーが自身の抱える問題と向き合う描写も辛辣だった。
“人の振り見て我が振り直せ”ではないけれど、他人と交わることで人として逃げてはいけない場面、嘘を付いてはいけない現実を思い知るのかもしれない。

ジョーの通話内容から全てをイメージし、話の中身を理解していくストーリー。
まるで小説を読んでいるかのような感覚に陥る時間、オーディオブック形式の読書が最も近いフィーリングかな。
『声』の持つ情報量と確度の高さを思い知った。
ハル

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