空海花

世界で一番美しい少年の空海花のレビュー・感想・評価

世界で一番美しい少年(2021年製作の映画)
3.5
1971年のルキノ・ヴィスコンティ監督作「ベニスに死す」で主人公を破滅に導く少年を演じたビョルン・アンドレセンを追うドキュメンタリー。
アーカイブ映像を交え、
“世界で一番美しい少年”と謳われ、センセーションを巻き起こした彼が見た天国と地獄を明かす。
クリスティーナ・リンドストロム監督とクリスティアン・ペトリ監督が、「ベニスに死す」出演前から公開後、そして現在へと続くアンドレセンの歩みを映し出す。

当時15歳のビョルン・アンドレセンは巨匠ルキノ・ヴィスコンティに見出され、映画「ベニスに死す」のタジオ役に抜擢された。
冒頭はヴィスコンティによるストックホルムでのオーディション風景から。
彼を一目見た後のヴィスコンティの変化に目を見張る。
上半身を裸にされる。ビョルンが抵抗するような戸惑いを見せているのが分かる。
またファンレターは日本のファンからが最も多く来日したこともあるらしい。
合間にCM出演、レコードも出していた。
明治チョコレートのCM、見覚えがあって思わず声をあげそうになる。
その美しさを消費しようとする大人の世界の醜さ。
日本もしっかり仲間入りしていたかと思うと耳が痛い。
当時のプロデューサーはいまだ気づいていないような素振り。
『ベルサイユのばら』の池田理代子とも会う。
オスカルはビョルンをイメージしていたのだとか。

それから50年後、『ミッドサマー』に彼はその変貌した姿を現した。
娘が訪ねていくと、汚い部屋や風貌にショックを受ける。
だが、掃除もして身ぎれいにすると
やはり美しい顔立ちは残されており、じっと見つめてしまう。
確かに65歳とは思えないほど皺は刻まれてしまっているが。
長髪の白髪にサングラスはキマっていた。

生い立ちの秘密
栄光と苦悩、
憂いと怖れ
それらを語るだけではなく、
今の彼自身が
この数奇な運命を辿るように
東京、パリ、ベニスに向かい
自らの栄光と軌跡を辿るところがとても興味深い。
父親の出自、母親の死、息子の死と向き合い、そのうえで生きていこうとする姿は胸を打たれたし、
勇気をもらえた。

もう昔のように『ベニスに死す』は観られない。


2021レビュー#220
2021鑑賞No.457/劇場鑑賞#95
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