えいむ

世界で一番美しい少年のえいむのレビュー・感想・評価

世界で一番美しい少年(2021年製作の映画)
4.5
あの狂乱の何年も後だからやっと伝えられるようなことがドキュメンタリーとしておさめられてます。

『ベニスに死す』の映画の中のビョルン・アンドレセンは本当に本当に美しかったけど、この映画ではその『ベニスに死す』のオーディションで現れた時のビョルンが映されてる貴重な映像が入っていました。目の覚めるような奇跡のような美しさ。まさに伝説。

そして映画完成後、巨匠の監督に連れられ完璧な“世界で一番美しい少年”の数年後の年老いた美少年として歩かされる様子。家庭環境のこと。

美しさと陰のある憂いを帯びた表情が日本人にはたまらないわけですが、その美しさを観ながら裏側の彼の苦しみ悲しみを観ることになる映画。

50年後の『ミッドサマー』のあのシーンの撮影現場も観れます。

現在の彼の暮らしの悲惨な状況やそれを支える優しい彼女からキツくお別れを予告されるような電話を受ける様子、
「ベルサイユのばら」の池田理代子さんをはじめ来日時に関わった日本人の方の、彼を思うようで能天気な発言までドキュメンタリーとして組み込まれていて、
この映画自体、そして鑑賞しているこちら側、私自身も、いまだに彼を搾取し続ける悪夢のような世界に思えて、申し訳ない気持ちにもなりました。
それでもやっぱりビョルンの美しさに惹かれて観たくなってしまう。現在も美しいです。

物語は今も続いている。
世界に救いがあってほしい。
とても貴重な映画。
えいむ

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