Jeffrey

白い馬のJeffreyのレビュー・感想・評価

白い馬(1952年製作の映画)
3.8
「白い馬」

冒頭、ここはアルルで二又に分岐したローヌ川と地中海に囲まれたフランス南部の三角州地帯、カマルグ。捕獲、フォルコの家族、馬飼いとの約束、新しいリーダー、手負いの帰還、束の間の休憩、海へ。今、少年と馬の絆が映される…本作はアルベール・ラモリスが監督、脚本、制作を務めた1953年の40分の映画で、この度廃盤のDVDを購入して初鑑賞したが傑作。本作はカンヌ国際映画祭の短篇グランプリとジャン・ヴィゴ賞を受賞している。

さて、物語は南フランス、カマルグの荒地に野生の馬が群生していた。ある日、群れのリーダーの美しい白い馬が馬飼いたちに捉えられるが、すぐに柵を破って逃げ出す。少年フォルコは白い馬を馬飼いから守ろうと手網を掴んで、温地帯を引きずり回されてしまう。しかし手網を放さないフォルコに白い馬は心を許して、次第に深い絆で結ばれるようになる。フォルコは馬飼いたちから白い馬を必死に守ろうとするが…と簡単に説明するとこんな感じで、白い馬と少年の感動の物語をモノクロームの映像で美しく描いた傑作である。

荒馬なのにも関わらず、あの美しい横顔とスマートな毛並みと体に光沢のある白い馬が美してほっとする。あんな綺麗な馬をよく見つけてきたなと。それを少年が影から一部始終見ていて、あのいとも簡単にロープを断ち切り、柵を壊す荒馬を見て魅了される。フォルコは弟とおじいさんと小さな白い家に住んでいて、3人は動物たちに囲まれて暮らしている。魚を食べた後、いつの間にか彼は眠る。彼は白い馬と海辺で遊んでいる夢を見る。白い馬が本当の友達だと感じ始める。そして目覚めたフォルコは魚を取りに出かける。そこで白い馬を見つける。彼は静かに近寄っていくが、白い馬は彼に気づき走り去っていく。

そこに馬飼いたちが現れ、再び白い馬を捕まえようとする。二度と捕まるかと馬は必死で抵抗する。結局馬に逃げられた連中はあんな馬欲しいやつにくれてやると言って、少年が僕でも?と言うと男たちはやるよと言う。だが侮辱的な言葉に少年は深く傷つく。しかし僕が捕まえたら白い馬は僕のものだと考え、フォルコは白い馬を探し始める。白い馬を見つけた彼は投げ縄で白い馬を捕まえる。白い馬はフォルコを引きずって逃げ出す。だが結局しがみついた彼は泥だらけになりながらロープを手放さなかった。その様子を白い馬は見つめる。カメラはそこをクローズアップする。彼は立ち上がり、白い馬に寄り添い優しく撫でる。馬は少年に心をここで許し始める。

そして馬を家に連れて帰り、彼と弟とおじいさんは白い馬と暮らし始める。けれど、あきらめ切れない馬飼いたちが、馬の群れを連れてやってくる。馬の群れを見た白い馬は群れが恋しくなり、家から逃げ出す。白い馬は群れに戻るが、群れに新しいリーダーがいることを知る。それが嫌で仕方ない白い馬は新しいリーダーと争いになる。少年の下に白い馬が戻ってきた時、白い馬は膝に怪我をしている。少年はシャツを破り傷の手当てをする。傷が治ると少年は柵の上から白い馬に飛び乗ろうとする。するとびっくりした白い馬は走り去ってしまう。

その頃、再び馬飼い達は白い馬を追っている。人間が1番強いことを、なんとしてでも示したがっている。白い馬は野原に逃げ込む。そして奴らは白い馬を炙り出すことに決める。あっという間に白い馬は煙に囲まれてしまい、人間たちが仕掛けた罠にパニックになってしまう。幸運にも少年は空に煙が立ち上っていることに気づきいて何が起きているのかすぐにわかる。少年は危険を承知の上で白い馬を助け出しに行く。そして少年と馬は走り、砂浜を走り抜けて、海までたどり着く。誰もが馬が泳げるとは思っていなかったが、白い馬とフォルコはローヌ川の河口に飛び込んでいく。少年は馬飼い達には耳をかさず、白い馬と共に波間に消えてしまう。まっすぐと泳ぎ続け、新たな素晴らしい土地へと突き進み、人と馬が仲良く暮らせる国へと願いを込めて海の先へと突っ走るのであった。

なんとも素晴らしい短編映画ではないか。40分程度にも関わらずものすごくプロットがしっかりしていて、南フランスのローヌ川の海の風景や、ハンサムな少年、のどかな田舎街がここまできれいにフレームインされるとは、すでにセンスが光る監督の意欲作だろう。ロングショットで捉えられる馬と少年の風景は圧倒的な美を作り出している。馬と馬が戦う場面も臨場感が圧巻する。これは見て損ない。
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