Sachika

帰らない日曜日のSachikaのレビュー・感想・評価

帰らない日曜日(2021年製作の映画)
4.2
最愛の日々に餞を。
初めて彼に触れられた時、その鈍い痛みは苦痛ではなかった。
最後に彼に触れた時、そこには悦びと寂しさが共存していて、どこか苦しかった。
別れ際にポールが口にする “Goodbye” という表情が、頭から離れない。

一糸纏わぬ姿で手に取った、本、煙草、パイ、ビール。
好きだなと思うシーンがある作品は、無条件に「良い映画を観たな」と思えるけど、本作は好きなシーン・好きな台詞が数えきれないほどあって、本当に観てよかったなと思う。
物語は切ないはずなのに、余白・余韻 全てが愛おしくて、どこか揺蕩う様な、ふわふわした心地よい感覚が残る。

マナーハウスの風景、湖、まるでオフィーリアみたいだなんて台詞、英国っぽくて良き。lovely。
それからオリヴィア・コールマンの演技には圧倒された。
「周囲の会話を聞いているだけで涙が出てしまうほど役にのめり込んでいた」という記事を読んだけど、どこからどう見ても腫れ物のような、感傷的な奥様だった。
そして彼女が最後にジェーンに言う台詞が本当に素敵。
だから悲しくても、本作は前向きで素敵な作品だったなって気持ちで見終えることが出来たんだと思う。

原作を読んでからもう一度観たかったけど、何処の本屋さんに行っても、ネットを見ても、売り切れているので、原作の重版か、映画の上映を再来月くらいまでお願いします!
Sachika

Sachika