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帰らない日曜日のalmosteverydayのレビュー・感想・評価

帰らない日曜日(2021年製作の映画)
3.5
本作に限らず、ほとんどの映画は事前情報をなるべく入れずに臨むのが常なんですけど、今日に限ってはこれが完全に裏目に出たと感じております。何しろ「昔」「しばらく後」「さらにその後」という3つの視点が目まぐるしく入れ替わりつつ展開していく構成なもんで、最初のうちは「え?こいつ誰?今の何?」と勝手が分からず大いに混乱させられたんですよね。次第に目が慣れてきたらば何となく話が見えて来たんですけど、終映後に公式サイトを見てやっと「そういうことか!」と腑に落ちた点も多々あり。原作小説(未読)を読んで臨むのが最善という気もしますが、少なくとも人物相関図だけはサラッと眺めておくのが良さそう。

とは言え、1920年代のイギリスを再現した映像はことのほか美しく、数多くのシーンが強く印象に残りました。鏡越しに人物を追うカットが多用されていたのも興味深いです。主演のおふたりが景気よくぼろんぼろん脱ぎっぱなしだったのも潔くてよかった。3月のあたたかな陽光であらわになる産毛と、在りし日の兄弟が愛した競走馬・ファンダンゴの輝く尻尾が美しかったです。

20220622追記:
映画がどうにも消化不良だったため原作本を図書館で。柔らかい文章で美しい情景が書き連ねられていて、まるで答え合わせのようにするする読み進めることができました。併せて、映画版との違いも分かりやっと自分なりにこの作品を咀嚼できた気がしています。劇中で奥様がヒロインにかけた言葉は残酷であると同時に新たな世界へ彼女を羽ばたかせるものでもあったと思うんですけど、あれは原作にないシークエンスだったのですね。その辺り、著者としてはどう思ってるんだろ。
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