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麻希のいる世界のおむぼのレビュー・感想・評価

麻希のいる世界(2022年製作の映画)
2.8
悪い噂を纏って学校内で孤立しているが音楽の才能がある女子高生:麻希と、彼女をひと目見た時からカリスマの幻想と愛しさを抱いた病弱な女子高生:由希が、明るい青春を送ろうともがいたところで不条理なこととやるせなさに襲われるリアリズム路線の青春映画だ。

麻希の住む砂浜の掘っ立て小屋や高校の教室、校庭のベンチといったロケーションが侘しさや大衆性、その中での静けさといった物語を感じさせるのが良い。

麻希を演じる役者の目の座った感じが印象的で、彼女が束の間、スタジオ練習でバンドと一緒にギターを手にしてThis is 向井秀徳な挿入歌を歌うシーンのエネルギーを感じさせるところも良かった。
(調べたら『排水管』という去年フジロックで初披露されたナンバーガールの新曲だった)

山田かまち氏の死因をオマージュしたであろう、一見トンデモな不条理もおもしろい。

ただ、そういった良いところが全てファッションに思えてしまうような、話と役者への演出があったと思う。

麻希のキャラクターは典型的なファム・ファタールであり、登場人物は皆、性欲が根源で動くと節々で印象付けており、物語をやるせない方へと傾かせる不条理なことのきっかけにつながるのは強引ではあるものの、わかる。
ただ、とことん状況を拗らせて悪くしてやろうという制作側の意思が感じられるその不条理なことの結果の都合の良さに、しらけてしまった。

そして、役者の声が力強く叫んでいる状態でどうにもならない状況や感情を事細かく説明しているシーンの多さが目立つ。
特に由希と祐介、スタジオ練習のドラマーの男がそんな感じで、若さというものへの偏見が過ぎると思った。
センセーショナルに感じるまでに至らなかった。

始まって10分ほどは一目惚れの緊張で台詞が全く無いが、それ以降あらゆることを力強く主張させまくり、不条理なことが起きた後には都合良く別の病気で声を失わせるし、この映画の最後のカットに関しても由希というキャラクターの制作者のおもちゃ感は強いが、寓話性が高いので演劇で見られたらより良かったのかもしれないと思った。
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