ピートロ

名付けようのない踊りのピートロのレビュー・感想・評価

名付けようのない踊り(2022年製作の映画)
3.8
田中泯という名前を知っている程度の知識だったので、その仙人然・哲学者然とした佇まいや、熱量のすごい踊りにひきこまれた。
見ている人との間にダンスが生まれるみたいなことを言っていたが、正直素人には難解なあの踊りを受け止められる感受性を持った観客らも素敵だなと思った。

他のユーザーの感想・評価

Orca

Orcaの感想・評価

-
私とは違う世界を見て、感じて、生きている人なんだなと思ってしまった。それほどにあらゆることへの感受性が違う。

踊りは素人で全然わからないんだけど、一つひとつの動きが大したことないような気もする一方、絶対自分には出来ないとわかる。
とにかく何がすごいのかわからないんだけど凄い気がする。ハッと目が惹きつけられて注目してしまう。
f

fの感想・評価

4.0
ダンサー・田中泯の生き方が興味深いと感じたのと、言葉よりも通じるものが"踊り"にはあると知った。今まで自分がテレビやインターネットで見て曲に乗せて身体を動かすだけ(踊りをやってる人、失礼に聞こえたら申し訳ない)だと思い込んでいた踊りよりもずっと"踊り"というものは広く深く、かつシンプルで、そして身近なものだったんだなぁと感じました。

その場所で感じ取ったものを即座に動きに変換する、その場と対話したものを"踊り"という言葉以前のコミュニケーションで観客に伝わるように翻訳する。すごいしかまだ出てこない。
Cineman

Cinemanの感想・評価

5.0
名付けようのない踊り
犬童一心監督
2022年公開

【Story】
1966年からソロダンス活動を開始し、1978年にパリ秋芸術祭で海外デビューを果たしたのをきっかけに、世界中のアーティストと数々のコラボレーションを実現してきた田中泯。
そのダンスの公演歴は現在までに3000回を超える。
映画『たそがれ清兵衛』(02)から始まった映像作品への出演も積み重なり、これまでのフィルモグラフィーには、ハリウッドからアジアまで多彩な作品が並ぶ。

そんな独自の存在であり続ける田中泯のダンスを、
『メゾン・ド・ヒミコ』(05)への出演オファーをきっかけに親交を重ねてきた犬童一心監督が、
2017年8月から2019年11月まで、ポルトガル、パリ、東京、福島、広島、愛媛などを巡りながら撮影。
この間に田中泯は72歳から74歳になり、3か国、33か所で踊りを披露した。
その道中を共にするのは、ドラマーの中村達也、音楽家の大友良英、編集工学者の松岡正剛、ハンガリー人ヴァイオリニストのライコー・フェリックスなど豪華な顔ぶれだ。

同じ踊りはなく、どのジャンルにも属さない田中泯の〈場踊り〉を、息がかかるほど間近に感じながら、次第に多幸感に包まれる―― そんな一本の稀有な映画を、ぜひスクリーンで体験して欲しい。
(本作品のサイトより)

【Trivia & Topics】
*凄い人がいるよ。
おそらくほとんどの人は田中泯の踊りを見たことがないだろううけど田中泯がどんなダンサーかを人に説明するのはとても難しい。
1974年に個性的なダンス活動が始まった時から現在に至るまで田中泯は全世界を舞台に踊り続けている。
全編即興演奏のフリー・ジャズがあるように泯さんの踊りも即興だ。
踊る場所とそこに集まった人々との無言のやり取りでその日の踊りがきまる。
どんなダンスになるかは本人にも分からない。
名付けようのない踊りを踊る人だとしか言いようがないので、このドキュメンタリー・フィルムは多くの人に田中泯の踊りの一端にふれるためのとても貴重で最高の贈り物だ。
いい映画だから見てよではなく「すごい人がいるよ、この映画を見てご覧」としか言いようがない。

*ぼくが見た田中泯。
1977年、フリージャズ界の巨匠、パーカッショニストのミルフォード・グレイブスが来日した時に田中泯と共演した。
場所はフランス文化センターの庭園だったような気がする。
ミルフォードの演奏はビートを刻むドラミングではなく終始一貫して波動を生み出してそれを発信する。

そ〜いう演奏が一時間ほど続きその響きの中で田中泯が踊った。
というか演奏が始まって何分たっても田中泯が動いているとは思えないほどゆっくりとした動きで「え?これってダンスと言えるのか」だった。

ゆったり身体を動かす太極拳を超スローモーションで見ているようだ。
たしか小雨降る夏の夕方だった。
半円状に囲んだ観客たちもじ〜〜っと二人を見つめている。

そのうちに田中泯の体中からうっすらと湯気が立ち始めた。
激しい動きや運動ではなくユックリ滑らかに動くことがもっともエネルギーがいるということをその時確信した。
見た目には何も起こらないのにこれほどドキドキするサスペンスを感じたライブはない。
貴重な体験だった。

*2時間釘付けにされた映像。
約2年間にわたる田中泯のライブ活動をとても丁寧に記録した犬童監督のワザも凄い。
インタビュー場面もあるがこけおどかしの動きなど一切ない、薄っぺらいエンタテイメントもない自然体の静かな動きを追った映像を2時間退屈させずに見せるのは至難の業だ。

これほど「凄い人がいるよ」と人に勧めたくなる映画はない。
『名付けようのない踊り』のサイト中で見られる大泉洋との対談もとっても面白い。
ダンサーという事は知らなかった。ゆっくりな動きで、型にはまらない…これは『田中泯』という踊りだ。
特別な事はなく、生活を通して体からにじみ出る感情を爆発させる。
とにかく凄い。老いた体がいきいきとしてかっこいい。
Leon

Leonの感想・評価

4.0
田中泯が手掛ける踊りはその時の空間や流れを汲み取った一度限りの表現であるため、本作の映画という形式にはめ込んでしまうのは田中泯の哲学に反する。故に犬童監督は田中泯から一定の距離を保ちつつ、他者による指向性が感じられない特殊な作りであり、田中泯の世界を映し出すことに重点を置くことは成功している。正直分かりかねるという感想を抱かせられた点で芸術へと昇華されている。
田中泯氏のいう「ダンス」とは、演者である田中泯と観客の間に生まれるものだと言う。

それは単なる踊りではなく、芸術を表現する手段であり、観客との対話であり、哲学である。

観ているこちら側に受け止めきれないほど溢れる熱量が伝わる圧倒的な表現方法としての踊りは、言葉を失い、ただただ魅入ってしまう。

タイトルの『名付けようのない踊り』は、フランスの哲学者 ロジェ・カイヨワ氏が田中泯のダンスを評して本人に伝えた言葉。

たまたま直近で観たアニメーション作品の山村浩二監督が本作のアニメーション部分を担当している。
シュウ

シュウの感想・評価

4.2
尊敬するロジェ・カイヨワに踊りを見せた時に、
「その名付けようのない踊りをいつまでも続けてください」と言われた彼の踊りを見ていると、
自己を追求していくと同時に、
その中に流れる普遍を追求するような、
そんな姿勢に見ているこちらも巻き込まれていくような、
素晴らしい体験ができました。

「商品としての作品を作りそれを持ち運べば20年間は生きられる」
「パリに学校をひらけば流派が誕生する」
そんな甘い誘いがいくつもあった
嫌悪の極み 

いったいこれまでにどれほどの数の人間が生きてきたと思うか
わたくしや個性のやっている程度のことはその中に必ずある
田中泯さんのダンスって良いんだな、と。
路上パフォーマンス
日本人スマホ向け過ぎてる。目に焼き付けて
あらん

あらんの感想・評価

5.0
非常に良い映画で大満足
田中泯の美しい事よ‼︎
こんな風に物事を感じながら生きて行きたい
fooL

fooLの感想・評価

-
「言葉」には意味がありそれがもつイメージがあり、感じたままからは必ず削り落とされるものがある。

田中泯さんの言う「踊り」とは、言葉に当てはめる前の、キャッチした全てを表現する、限定したり狭めたり、何かを生み出そうとしたりしない、最も本質的なコミュニケーションということなのか、と思った

見て良かったなあ
見る前より少し、世界が自由になった気がした
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