「グッドモーニング・ベトナム」「レインマン」で知られる巨匠バリー・レビンソン監督。「バンディッツ」以降は私の中では消えた天才扱いだったのですが、私が知らないだけで最近も小規模作品が増えましたがコンスタントに映画は撮ってたんですね。
そんな巨匠の久しぶりの大作というか話題作で野心作で日本でもちょっと話題になりましたがすぐにフェードアウト…。
日本だとアウシュビッツを題材にするとどうしても重くて敬遠しちゃう人が多いからなぁ…。かくゆう私もその1人で気にはなっていたけど、覚悟を決めてのやっとの鑑賞。
実在したプロボクサー、ハリー・ハフトの半生を息子のアラン・スコット・ハフトが書き上げた実話を原作としています。
恥ずかしながら全く知らなかったですが、あのロッキー・マルシアノと対戦した事があるんですね。プロボクサーとしてもあの時代においてはかなりののタフさだったと思います。
ボクシングは命を掛けたスポーツであるが、アウシュビッツで行われるそれは敗者は即銃殺の本当に命を掛けた残酷なボクシング。
しかも相手は同胞であり勝ち続ける程に同胞の命も失われる正に究極の選択…。ナチスってよくもこういう残忍で残酷な事を考え付くと思う本当に…。
「レインマン」でも魅せたようにこの監督は光と影の対比が好き。過去をモノクロにしたのは主人公にとって暗い過去だからとか演出が分かりやすい。
アウシュビッツを題材にした映画にしては陰惨さが足りないという声もありますが、それはあくまでもハリー・ハフトの半生を描く人間ドラマだから、アウシュビッツの陰惨だけで釣るような真似はしたくなかったのだと思う。
陰惨さはあのお互い分かっていての生存を掛けたボクシングシーンで充分に個人的には伝わりました…。暗い過去の演出のモノクロが少し淡くマイルドしてしまった部分もあるかとは思います。
プロボクサーとしてのボクシングシーンはあの時代のボクシングだから、打ち合う事が定番なのを再現していて洗練されたものはありません。
良い映画なのは間違いないけれど、抑揚なくずっと同じ調子で描かれているのが評価がイマイチ伸びない理由かも知れません。
アウシュビッツがどうだというよりは1人の男の壮絶な人生と安らぎに辿り付くまでを丁寧に描いた秀作人間ドラマと思いました。
まとめの一言
「ハンマーと砂浜」