菩薩

わたし達はおとなの菩薩のレビュー・感想・評価

わたし達はおとな(2022年製作の映画)
4.1
そもそもが童貞であるしこの先も童貞のまま死に来世は宮沢賢治になるので私にはまるで関係のない話であるが、案の定不愉快になったし大っ嫌いな話だししょーもないしくどいしいつまでやってんだよ…と思いつつめっちゃ好きだー!!!となり脳がバグってしまった。別にいい映画じゃないし、誰にも勧めたくないし、もう一回観るかと聞かれたら絶対にNO!なのだが、やっぱり本当に好きでどうしようとなった。演劇人が演劇人をクズとして描く自虐が現状相応しいかと言えばどうかと思うし、女性の描き方にしたって気持ち悪い点はあるし、これがリアルと言われても童貞の私にはハリーポッター以上にファンタジーにしか思えなかったが、男のクズさ(弱さ)と女のズルさ(弱さ)、何より(言い方は悪いが)逃げてしまえる男の現実と決して逃げられない女の現実を(撮影と言い)絶妙な距離感で捉えている為ぐうの音も出ない。男が悪い、女が悪いの話ではなく、元々が彼女の思いやりと自己犠牲の上に立脚している関係性であるし、お互い「わたし達はおとな」だからと本音の部分は隠しながら探り合いしてしまうが為にいつまで経っても結論には辿り着かない、から結局あの結末になってしまう。執拗な時系列シャッフルは賛否が分かれるだろうが、あれぐらい大胆な仕掛けが無いとただのイチャコラと痴話喧嘩で犬も喰わないし、徐々に亀裂が取り返しのつかない規模にまで膨らんでいくのを描くには正解だったのかも。これは単なる憶測なのだがこの監督さん『宮本から君へ』好きでしょ?話もひっくり返した様な話だし、ラストシーンはかぼちゃを喰らう中野靖子のオマージュでは。話し合いが解決を目指す為でなく論破を目的とする関係性になってしまったらもうその関係はダメだと思う。言うなれば「覚悟」の映画だが、猛烈に体力を削られれので観るのにもそれなりの覚悟が必要かと思われる…。ゲロ吐きながら号泣する木竜麻生に100点。
菩薩

菩薩