『メイジーの瞳』のスコット・マクギー&デヴィッド・シーゲル監督による、モンタナを舞台にした家族ドラマ。
父親が危篤との知らせを受け、疎遠だった姉弟がモンタナに帰郷する。
"Why did you leave me alone with him?"
インディペンデント系ネオウエスタン映画の良作。ロッキー山脈に囲まれた雄大なるモンタナの大自然を舞台に紡がれる、心に深い傷を負った姉弟が、悲劇的な家族の過去に向き合い、折り合いをつけていく家族ドラマだった。この結末には賛否両論あるかもしれないが、本作はあくまでもネオ"ウエスタン"。銃撃戦がなくとも、"父親殺し"の西部劇なのである。
大好きだった姉を助けられなかったことに罪悪感と後悔の念に駆られている弟と、大好きだった弟に裏切られたことに失望している姉。歩み寄ろうとする弟と、素っ気ない態度で突き放そうとする姉。会話は少なくとも、近くて遠い二人の距離間から、彼らの抱える心の傷がいかに深いものであるかが痛いほど伝わってきた。7年経っても依然としてかさぶたの状態だった。
長年馬屋に繋がれていた25歳の老馬"ミスターT"🐎は、ファミリーヒストリーのメタファーでもあった。安楽死させるのか、姉がNYに連れて帰るのか。姉弟の決断は、"ミスターT"にとっても、過去にけじめをつけ、新たな人生の一歩を踏み出そうとする姉弟にとっても最善の選択だったように思う。「モンタナの馬は走りたかったようだ。」という終盤の台詞が心に刺さった。彼が広大なモンタナの地を自由に駆け抜けたように、7年前から止まっていた家族の歴史も再び走り出したのだ。
オーウェン・ティーグとヘイリー・ルー・リチャードソンの演技力が光る。ヘイリー・ルー・リチャードソンは、ティーン向け恋愛映画の印象も強いが、『コロンバス』や本作で見せたシリアスな演技も良い。感情表現が豊かで惹き込まれる。
モンタナの歴史や文化、土地柄が垣間見える。田舎すぎてWi-Fiが届かない。長年家で働いてくれているお手伝いや幼馴染など、ネイティブアメリカンの人々が多く暮らしている。劇中で"旧西部の殺人現場"と称された、巨大な露天掘り鉱山跡が当時の姿のまま残る。
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