りっく

カールと共にのりっくのレビュー・感想・評価

カールと共に(2021年製作の映画)
3.4
世界中で移民排斥運動が激化している。そんな世の中の空気をNetflixオリジナル映画でも度々題材にしてきた。排斥される側を描いたイギリス映画『寄る辺なき者』も秀作だったが、本作は排斥運動に巻き込まれてしまう父娘を描いたドイツ映画だ。

父親は難民であるユスフをベルリンに亡命させる手助けをし、それをきっかけに愛する家族をテロで失い、その事件の首謀者とは知らずに傷心の娘はカールに惹かれることになる。彼が主催する若者の未来のための反政府集会は、新しい欧州の再生と安全の名のもとに、優生思想や脅威となる移民排斥を肯定し、やがて自らの「目的ある死」をもって国民感情の導火線に着火させようとする。

実際は被害者でもないのに、直接的には関係がないのに、代弁者として視聴者に訴えかけるメンバーへの違和感。そしてその運動に広告塔として利用されているのではないかという猜疑心。ふとしたきっかけで同乗した船から、降りることは許されないところまで流されてしまう様は実に恐ろしい。

一方で父親は娘を探し出し、カールの死をきっかけに世界で同時多発的に起こるクーデターの砲火をくぐり抜けるように、父と娘とユスフは地下水道へと逃げ込む。かなり極端な展開が多く、世界中でここまでエスカレートするのはやりすぎな印象は受ける。だが、暴力が蔓延るこんな世界を望むのかと力強く警鐘を鳴らす社会派サスペンスだ。
https://shimacinema.hatenablog.com/entry/Je_Suis_Karl
りっく

りっく