しん

ザ・ドーターのしんのレビュー・感想・評価

ザ・ドーター(2021年製作の映画)
3.5
東京国際映画祭にて視聴。緩やかな狂気の積み重なりが、容易にポイントオブノーリターンを超え、残虐な世界を現出させることを上手く描き出しています。小さな家で起こる物語は、美しい景色を伴って観客の気持ちに気持ち悪さと気持ち良さを同時に生じさせます。ワンシーンワンシーンが丁寧に紡がれるので、意味不明になったり重要な所を見落としたりすることがありません。構成の妙を堪能できる作品だと思います。

特にイレーネの表情がとても良いので、彼女が今何を思っているのかがストレートに伝わってきます。また家の主人の優しい狂気は、ストックホルム・シンドロームなどをもたらす犯人のような感もあり、妙にリアルです。

このように良くできた作品なのですが、イレーネの過去があまり描かれていなかったのが残念でした。そこがあれば、この作品の気持ち悪さが増したのではないかなと思います。その点が少し残念でした。
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