ギズモX

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島のギズモXのレビュー・感想・評価

5.0
「だから、もう一度あそこからやり直してみたいんだ」
「もちろんあそこを補修して、復興させて」
「そして、作ってみたい」
「"人と人とが本当に分かり合える社会を"」
『機動戦士ガンダムTHE ORIGN アムロ0082』

面白かった!無茶苦茶明るい!ほっこりする!
まさかここまでお祭り感溢れるガンダム映画になるとは思わなかった!
最終決戦ではWBの仲間と島の子供達全員が集まってドアンとアムロを横で応援してたりと、まるで70年代の子供向けロボアニメみたい!(※初代ガンダムは70年代の子供向けアニメです)
映画館で見れて本当に良かった!

『機動戦士ガンダムTHE ORIGN』の安彦良和氏の最後のガンダム作品。
『THE ORIGN』ではジャブロー編の後に、過去編、ジブラルタル編と続くので、過去編とジブラルタル編の間に起きた出来事として見るなら矛盾が殆どなく『THE ORIGN』の番外編と呼べる物語。
本作が安彦ガンダムのラストエピソードになった訳は理解できた。
というよりも、"このエピソードが最後に来なければならなかった"
連邦とジオン、アースノイドとスペースノイド、オールドタイプにニュータイプ、様々な垣根を越えて人同士が分かり合えた結末は、"人と人とが本当に分かり合える可能性"を示した、正に到達点そのものに違いないからだ。

僕は安彦良和氏が手がけた漫画作品、『ジャンヌ』と『イエス』が無茶苦茶大好きで、本作のシナリオの構図はその二作と酷似している。
『ジャンヌ』と『イエス』は、どちらも物語の主体となる登場人物を、師弟関係に近い立ち位置にいる別のキャラクターの視点から描くという手法が取られ、ニュータイプ的な神格化された超人としてではなく、小さき一人の人間として彼らの主義や思想、葛藤と共感、そして畏怖を映し出し、人が隠し持つ闇の部分にも触れて読み解く話だった。
そして今作のアムロも『ジャンヌ』の主人公エミールや『イエス』の主人公ヨシュアのように、時代の流れに翻弄されたジオンの脱走兵ドアンと出会い、彼らと交流し、己の使命を果たす戦いを繰り広げることとなる。

『THE ORIGN』を含めた安彦作品には、人はわかり合えないのが当たり前なんだけど、わかり合おうと歩み寄ることが大事なんだというテーマが散りばめられていた。
窮地に陥ったエミールをジャンヌが幾度となく救った時や、ヨシュアがイエスやマリアを思って最後の行動を起こした時みたいに、ガンダムがザクを投げ捨て、ドアン達を戦争の呪縛から解き放ったあの瞬間、全部とは言えなくとも分かり合えたのではないだろうか。

しかしだ、本作は本当に明るい!
子供のお誕生日会で締めるこの明るさは、今までのガンダムや安彦作品にはなかったもので、悲しんでいる者達を優しく包み込むような暖かさが満ちている。
こんな嬉しいことはない!

人の革新、ニュータイプの理想、その力、
そんなものに頼らなくとも、人は分かり合えるのではないでしょうか。
ドアンやカーラ、そしてアムロのように、誰かの為に寄り添い合えたのなら。
安彦作品の集大成な傑作です。

「悲しませる訳にはいかない」
「あの人はもう十分悲しんでいるんだから」
「悲しませないぞ」
「もうこれ以上」
安彦良和『イエス』

「ありがとうエミール」
「あなたのおかげで私、やっと帰ることができる」
「帰る?!どこへ?」
「故郷へ?!」
「そう!故郷へ帰るの!」
安彦良和『ジャンヌ』
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