真田ピロシキ

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.7
ククルスドアンってネタにはなるけど、ぶっちゃけそこまで面白いわけでもない。映画で削られたエピソードなら避難民親子の方が良いだろと思ってたので期待してなかったが意外と楽しめた。TVではなくオリジン準拠なのでアムロはこの時点でランバ・ラルや黒い三連星まで退けてて最早歴戦の勇士(三連星はうろ覚え)なのだが、そのアムロを打ち破るドアンは能力を爆上げされている。ラルのグフを斬った動きを避けてる事からドアンの技量の高さが分かって、ファーストガンダムを見てる人へ目配せされた演出。ドアンは赤い彗星と並んで語られる程らしいがそれは流石に盛りすぎだろ。でもジオンには赤い稲妻ジョニー・ライデンや白狼シン・マツナガのような訳の分からないエースが複数いるからそういうものと思えば納得。何か二つ名を名乗った者勝ちな軍隊ジオン軍。連邦はそんな恥ずかしいことしない。アムロが白き流星とか言ってる某ゲームは捏造もいいとこ。ちなみにドアンの二つ名は褐色のサザンクロス。キングゲイナーの黒いサザンクロス ゲイン・ビジョウさんのパチモンでしょうか。富野作品だからオマージュなのかもしれない。ヤギが目立つのも富野監督が参加してたハイジオマージュ?

本来は30分もないTVの一エピソードかつ物語全体としては削っても全く差し支えのなかった話を109分もかけるとミニマムな物語の良さは損なわれてて、オリジン版の有能ゴップ提督とマ・クベ中将の駆け引きのような大きな物語を絡ませるのは蛇足。隊長だったドアン離脱後の褐色のサザンクロス隊も薄味で、物語的には一応ボス敵になるのに名前も覚えてないドアンを憎む隊長、ドアンと深い仲だったっぽい金髪女兵士、ジェネリックヤザンみたいな奴の描写とかいらんのでモブ兵士にして90分でまとめて欲しかった。それとオリジンなのでギャグ演出が多いのよ。懐古に向けてるのか今の世代に向けてるのかイマイチ分からない。

カイとハヤトはアムロの友達ではないが仲間とは認識してて、スレッガーの提案する軍法会議ものには進んで乗っかるとこはとても良い。つーか、上陸後にカイの通信を一方的に切るアムロが酷い。危機に瀕してたらどうすんだよ。やけによく喋る便利屋ジョブ・ジョンの存在も通なガンダムオタクには評価ポイントになろう。それと失敗を喜ぶマ・クベはオリジン版のマ中将として正しい。キシリアの忠犬だったTV版と違って「ジオニズム?知るかよ」と自分の考えを持った人間で、あんな頭のおかしいファシスト国家に属する人間の態度としては賞賛されるべき。結末と言えばオリジナルを見た時はザクを投げ捨てるのは良いのかと思ったのだが、敵基地攻撃能力とかイキった言葉が蔓延する時代に作られたフィクションとして考えると、この不戦表明こそ描かれるべき。こう考えるとこのエピソードを長編映画に選んだ意味もある。もっとも宇宙世紀の人間は現実以上に戦争が大好きな野蛮人なので心配になるが。それとドアンに対して「あなたには戦争の匂いが染み付いているから敵を引きつける」と言ったアムロがモビルスーツではない人間をハッキリ踏み潰す場面を入れたのはちょっと解せない。今後のアムロが辿る血塗られた道を示唆したのかな?

ポケ戦みたいなもので人間ドラマがメインなので戦闘は少な目。いつも通りやられメカだが冒頭のミサイルランチャーをぶっ放すジムはカッコいい。スレッガー機はルッグン墜としただけでなくもう少し活躍しろよ。カラーリングはカッコいいのに冴えない姿。クライマックスに満を持して登場するガンダムは完全にスーパーロボット。そこは安彦良和が監督してるだけあってか、当時のテイストを感じさせられ新しいけど古く面白い。こういうのができるのはオリジナルスタッフの手腕だと思う。ザクレロ爆撃機とかオリジンではユニークな解釈してたからなあ。