平野レミゼラブル

レイジング・ファイアの平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

レイジング・ファイア(2021年製作の映画)
4.6
【これこそ最高峰!!今年最後にアクション映画はまた一つ次元を押し上げる…ッ!】
えー、2021年も終わりがもう近いため、ちょっと今年観たアクション映画を包括的に振り返りましょうか。
まず、私が一番期待していたのがコロナ禍で何度も延期を繰り返していた『るろうに剣心』シリーズの完結編。待ちに待った期待に見事応えてくれていまして『Tha Final』はファンタジー路線の、『The Beginning』はリアル路線の剣術で最高と言えるものを魅せてくれました。
逆にノーマークから凄まじいアクションを浴びせてくれたのが『ある用務員』、『黄龍の村』、『最強殺し屋伝説国岡』、そして『ベイビーわるきゅーれ』の阪元裕吾監督。インディーズ映画界隈の方ですが、そのどれもが大作以上に凝りに凝ったもので非常に見応えがありました。スタント・パフォーマーという裏方ながら、表に出ても華がある伊澤彩織さんというアクターを知れた収穫も大きいですね。
同じインディーズ界隈で言うならばアクションの本場韓国発の『スレイト』も低予算ながら出来ることとしてアクションに力を入れていたのが嬉しいところ。また韓国映画では他にマイナー気味ですが『剣客』もしっかりした剣戟アクションでお気に入りの一つです。
変わり種で言うと『アフリカン・カンフー・ナチス』もありました。まあ、ストーリー・演出共にZ級と言って差し支えないのですが、ガーナの人達の身体能力はガチ中のガチでふざけきった作風の中に光輝く宝石を見出せましたね。
メジャータイトルでは特に『シャン・チー/テン・リングスの伝説』がスゴかった。前評判じゃあ地味だなんだの言われましたが、主演のシム・リウのキレッキレのクンフーで黙らせていくスタイルが格好良かったです。
純正なアクション映画からはかけ離れますが『孤狼の血LEVEL2』や『ただ悪より救いたまえ』といったノワールでは、その暴力性を際立たせる無茶苦茶な勢いのアクションが気持ち良い。他にも『モータルコンバット』のフェイタリティへと繋げる外連味や『最後の決闘裁判』における残虐甲冑ファイトなども特筆に値しますが、このままだと延々と書き続けられそうなんでこれくらいにしておきますか。要は今年はアクション映画が豊作だったってことです。

そして、本作『レイジング・ファイア』ですが、ことアクションという観点では今挙げた全ての作品の頂点に立つ作品だと断言しちゃいます。えー、何というかアクション映画の一つの転換期に立ち会ってしまったというか、今年どころか今まで観てきた全てのアクション映画を過去にしてしまうレベルにアクションの質がちょっと高すぎる……!!
主演が『イップ・マン』シリーズで名を馳せ、全てのアクション俳優の師と化したドニー・イェン、スタントコーディネーターに『るろうに剣心』シリーズの谷垣健治、そして近年多くのポリス・アクション映画を手掛けつつも58歳で惜しまれつつ逝去されたベニー・チャン監督の作品ということで、その極まりきったアクションの数々には納得です。
というか、ベニー・チャン監督、最後の最後にこんなアクション映画を次の段階に押し上げるエポックメイキング的作品を撮っちゃうんだから、とんでもない遺産残しやがったな!?って感じだ……改めて、その偉業に敬意を払いつつご冥福をお祈りします。

アクションの質・量・種類全てが高品質かつ豊富な手数をもって披露されていて、あまりに凄すぎて常に爆笑しながら連続ガッツポかましてしまいます。体術・カースタント・ナイフ術・銃撃戦が次々押し寄せてくるアクションの濁流で、一つひとつはありがちなアクションなのに凄い練度で組み合わせたり、並行して見せてくるので結果的にどれも観たことのない映像になっちゃっている。
一番ヤバかったのが、銃弾を防ぐためにバイクをウイリーさせながら爆走させて、その状態から逆に銃撃キメだした時の流れ。ウイリー銃撃で苦戦させたところに、ドニーさんがパトカーをブッ飛ばしてバイクの上を取り形成逆転。それでも抵抗を続けるバイクはウイリーしながらパトに突撃。割れた窓に車輪を押しつけつつ銃弾叩き込み、パトがそこから逃れようと走らせたらタイヤがバーストして暴走。あわや子供を轢くって瞬間にドニーさんが車外に飛び出て咄嗟に子供を抱き上げて救う……の流れは痙攣起こすレベルに興奮しました。ナニコレ!?ナニコレェェェーーーーーーッ!?

アクションに至る構図も格好良すぎる画が多すぎて、脳だけでなく眼球も焼き尽くします。
特に格好良いのが真面目なオールバック眼鏡警官から、ザンバラロン毛グラサンの強盗団首魁にまで見事なまでの闇堕ちを魅せるニコラス・ツェー演じるンゴウ。ワイルドな時の斎藤工を思わせる容姿から繰り出されるレイピアのように鋭く早い蹴り技の時点で惚れ惚れしていましたが、終盤は豆まきのように悠々投げつける手榴弾の画などがお出しされて、滅茶苦茶に滾ってしまう。
ラストバトルでドニーさんとサシで向かい合った時に披露するナイフ術なんて、心の中の中学二年生が泡吹いて倒れるレベル。シャカシャカシャカ…チャッ!で顔の両脇にナイフ構えて首傾げからのニコッは心の中の夢女子も絶頂しちゃうのよ!!ドニーさんは無骨に警棒をシュバッと出して中腰で構える対比とか、心の中の御婦人がPixivでお腐れ小説を書き始めるレベル。
この一戦は谷垣さんが監修しているらしく、それこそ『るろ剣』で観た超高速剣戟の応用っぷりが素晴らしい。実写るろ剣でも上位に入る剣心vs外印戦をさらに大幅に強化したようなもんですからね。そりゃアガりまくりますよ!!
幸い、ここら辺は公式で動画上げてるので観てもらった方が早いッスね。君もドニーさん×ニコラス・ツェーのお腐れ小説を書かないか!?

【壮絶な死闘映像解禁!!ドニー・イェンからの音声メッセージも到着!『レイジング・ファイア』】
https://youtu.be/ddQBaNEFwKE

正直、スゴすぎるアクションの連打で脳を粉みじんに破壊されたため、ストーリーの細かいところが入ってこなかったのは我ながらどうかしているとも思うんですが、そんくらいアクションに脳のキャパシティ割かなきゃいけないレベルに充実していたんですよ!!
いや、断片的に覚えているストーリーからして、内容も良かった気はしますよ!?

ンゴウはかつてドニーさんの相棒で、そん時は真面目な警官だったんですが、「責任は持つから何が何でも事件を解決しろ!」との上司の命令を受け、エスカレートした尋問の末に重要参考人を嬲り殺してしまう。しかし、裁判の時に上司からは「部下が勝手にやったこと」と見捨てられ、ドニーさんも己の正義に嘘は吐けない性格のため、ンゴウが参考人を殺したと証言して有罪となります。
元警官ともあって、刑務所の中で壮絶なリンチに遭い身も心もボロボロになった彼が出所後に残ったのはドス黒い復讐心のみ。かくして彼は一緒に投獄された同僚達と共に闇ルートを襲って大金をせしめ、同時に警察組織へ戦争を仕掛ける復讐のギャングと化すのだった……ともあって、ドニーさんとンゴウの因縁がしっかり描かれているからラストバトルへの流れも熱いんですよ!!
まあ、警察の体質のせいでンゴウは闇堕ちしたって設定なのに、ドニーさんに対する上層部は軒並みクリーンなところなんかには引っかかる部分はなくはなかったですが……なんか不祥事起こしたヤツに落とし前はつけさせたし、これで禊は払ったってことでいいよねって感じで急に警察組織が浄化されちゃった感覚強いよね、あそこら辺。まあドニーさん自体が高潔な警察だってことは最初から丁寧に描いているし、別に些細なこととして流しちゃっていいんですけど。アクション始まったら、どうせこんな不満点遥か彼方にフッ飛んじゃうので。


ここまで、アクション最高!!ってこと伝えてきましたが、正直言葉で説明できた気がしませんね…何はともあれ、まずは体感してくれ!!って作品ではあるので。
特に僕は全体で言うとそこまでアクション映画観ているワケではないし……そんな深くアクションを語れるワケではない僕が敢えて軽々しく「これがアクション映画の最高峰!!」なんてデカい口叩いていいのかって遠慮もありました。
ただ、今年一番ハマったアクション映画である『ベイビーわるきゅーれ』の阪元監督が「今まで観た映画で1番面白かった。」と呟いていたんで、開き直って自信持って褒めそやかしました。“今年”じゃないんだぜ…“今まで”なんだぜ……「あんたほどの実力者がそういうのなら……」すぎる。

https://twitter.com/28kawashima/status/1474613163476029441

しかし、本当その前に観たのがよりにもよって脳髄に暴力を注ぎ込んで根こそぎ破壊していった『ただ悪より救いたまえ』ってこともあって、『レイジング・ファイア』を観た時には間違いなく1日に摂取する暴力の許容値を余裕でオーバーしていましたね……なので、年明けにはまた『ただ悪』と別個で観に行こうかな……
それくらいにカロリーマシマシなアクションを堪能できるし、アクション映画の一つの集大成ではあるので本当に一度観てください。少なくとも僕はこれが2021年の映画納めになって良かったァ~って感慨でいっぱいでした。

超絶オススメ!!