ショウコ

雨を告げる漂流団地のショウコのレビュー・感想・評価

雨を告げる漂流団地(2022年製作の映画)
3.6
とてもとても興味深く観る事ができました。日本人の遺伝子が持つユニークスキル「擬人化」もここまで来たか!まさか建造物を憂いを湛えたショタに変換するとは…やるよ👏そしてそれをすんなり受け入れてしまえる自分もまた日本人なのだなと再実感

「異空間に飛ばされた少年少女のサバイバル&夏休みジュブナイル」…の様相ですが、根底にあるのは移ろいでゆく日本の住宅事情と消えていくものを惜しみつつ順応せざるを得ない寂しさ、そしてエロである(無かったとは言わせない!)

飛ばされた異空間はつまり「彼岸」です。三途の川と言っても良さそう。形あるものには命があって、その命の行き着く場所を見た子供たちが心に歴史を刻んでひとつ成長する…というなかなか深い内容なんですけどなんせ建造物なもんだからもの凄くシュールな事になってました。だって団地が…遊園地が…!!

金かけて大真面目にこんな事やれるのはジャパンぐらいなもんでしょう💮あぁ八百万の神の国




かわいくて美しい作画はもちろん、緻密なアニメーションを見られるだけで幸福感に目が潤むし無駄とも思える細かな動きまで描いている事にため息が出ます。中でも素晴らしかったのは「物理慣性」の表現!

建物がそのまま水上を漂流しているので、その建物に居る人物はひっきりなしに揺られたりよろめいたりします。この時の髪や目の動きとか重力方向の変化がどれを取っても気持ちいい。観覧車のワイヤーが慣性でバシバシ外れていくシーンなんて血が滾って仕方なかったです🔥それでいてアニメならではのディフォルメも加えられておりずっと楽しい

もう一つ気になったんですけど最近やけに現実志向じゃないですか?廃墟での自給自足生活なんてちびっ子ワクワク鉄板シチュエーションなハズなのにビックリするぐらい余裕が無い。そもそも既製品のカップ麺とお菓子ばっか食ってるし食料調達は別のデパートとか自販機だし腹減って口ずさむ歌はビッグマックだしみんなどんどん飢えていくしケガはやけに生々しくダメージもしっかり入る。そしてエモい団結シーンはあっても大概どうにもならない。夏芽ちゃんが残ろうしたのも…この世から居なくなりたい人…って事ですよね🤔

「天気の子」しかり、これが現代っ子に見せるべきリアルって事なんだろうか




古い建物が消えていく事を実際に小学生世代が惜しんでくれるとは思えませんが、そうであってくれたらいいなーと願う中年〜老年世代にはザックリ刺さりそう。人の死にも似たような事が言えるわけで、どちらかと言うと子供よりは死期が近めの大人に向けた作品だと思う

ちょっと前のゴーストバスターズ(リブート)も次世代が憧れてくれてる感を演出してたし、今後はそういった層をターゲットに見据えた作品が増えそうな気がする

エンディングと挿入歌、「ずとまよ」って言うのか。ええやん
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