マヒロ

マクベスのマヒロのレビュー・感想・評価

マクベス(2021年製作の映画)
4.0
2022年映画館初め。シェイクスピアの『マクベス』をジョエル・コーエン監督が映像化した作品。兄弟の片割れのイーサンは今回不参加とのこと。

『マクベス』と言えば、黒澤明が『蜘蛛巣城』の元ネタにしたということは知っていたけど、元の方は知らなかったので今作で初鑑賞。話の筋が『蜘蛛巣城』と同じで、オマージュとかじゃなくて本当にマクベスまんまだったんだなと驚いた。

コーエン兄弟の作品と言えば『バートン・フィンク』とか『ファーゴ』なんかのユーモアと冷徹さが同居した不思議な作風が印象深いけど、今作はあくまで『マクベス』の映画化として原作を忠実に再現しているようで、古めかしくて遠回しな台詞回しなども含め、良くも悪くも監督らしさはあまり感じられず。

ただ、好みかそうでないかと言われたら圧倒的好みで、全編モノクロで撮影された映像が良くて、徐々に平常心を失うマクベス(デンゼル・ワシントン)と夫人(フランシス・マクドーマンド)の心象を映し出したかのような禍々しくも美しい画面が素晴らしかった。予言を残す謎の老婆の登場シーンが特に良くて、真っ白な背景の中にボーッと浮かび上がる死神のような老婆のコントラストが脳裏にこびりつくようなインパクトがあった。
モノクロもそうだし、題材も含めてベルイマンの映画っぽさもあり、そこも好みのポイントかも。

前述の通り「コーエン作品らしさ」はあまり見受けられないので、そこを期待してしまうとちょっと違うが、純粋に映像作品としてはクオリティの高いもので、個人的には満足出来た。事前に『蜘蛛巣城』観ていて、演出や展開の違いとかを見比べられたのも良かったかも。

(2022.2)[1]
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