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ダ・ヴィンチは誰に微笑むのケロケロみんのレビュー・感想・評価

ダ・ヴィンチは誰に微笑む(2021年製作の映画)
4.0
「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」“青い日記帳”限定試写会にて鑑賞。試写会久しぶり
NYの美術商がアメリカ南部のオークションで見つけたレオナルド・ダ・ヴィンチの“消えた絵”そっくりの絵。「サルバドール・ムンディ(救世主)」という絵は晩年作「洗礼者ヨハネ」の前、ロンドンの「岩窟の聖母」とほぼ同時期の1508年頃の制作で、1507年にルイ12世から「我が国専任の画家兼技師」に任命され、その年の政府書簡に「王が望まれる1点の板絵」の言及が「救世主」のことではないかとのこと。当時レオナルドは絵より数学などほかの分野に興味が移り工房で弟子に作らせ最後に手を入れるのみだった、という説がある。
どんな絵画かはホラーの版画に「レオナルド作」と書かれた写しが遺されているのみで何百年も行方不明だった。

が、この映画そんな絵画の由来などガン無視。終始「高く売るためにこんな努力をしました」「いや美術館のプライドにかけて軽はずみな見解をしめせない」と言ったせめぎあいと金持ち王子のやりたい放題が見どころ。
13万円で落札した「救世主」が、2017年、クリスティーズのオークションで510億円でせり落とされるまでの美術商、学芸員、研究家、オークション会社、購入者らのあけすけなお金儲け話で、アート界の陰謀をつつく。
クリスティーズのオークションではマーケティングマンが活躍する。「救世主」をあらゆる階層に公開。絵にはカメラが仕掛けてあり、鑑賞している人々が救世主を見た時のリアクションがうつされる。レオナルド・ディカプリオも(演技かもしれないけど)「救世主」を見て涙ぐむ姿を撮られ、プロモーションに使用された。おかげで作品の知名度は爆上がりし、価格もつり上がった。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーとルーブル美術館、同じ「岩窟の聖母」を所蔵する美術館の見解の違いが面白い。お金の話ばかりで作品についてはあまり語られない、大衆の絵画愛をプロモーションに利用するマーケティング精神に
上映後のトークショーで主催の青い日記帳の中村剛士さんが「これだけ古くなると真贋の見分けは難しい。それより現代アートのオークションにかけられたことが興味深い。この絵画のパロディなどのムーブメント1連がもう、現代アート。」と仰っていた。
「レンブラントは誰の手に」という、やはりレンブラント初出の絵の真贋を巡るエピソードも専門家が「真作!」といえばそれに従う仕組み自体が異様。11月26日ロードショーなので、気になる方はご覧に

。サルバドール・ムンディについては、水晶玉と髪の毛は見事だけどなんだかバランスが私好みでないです。
日本画の売買も闇が深いなぁ……