Aya

ダ・ヴィンチは誰に微笑むのAyaのレビュー・感想・評価

ダ・ヴィンチは誰に微笑む(2021年製作の映画)
3.6
#twcn

ヲタクの古典劇。

観ている間すっごく興奮しました。

観終わってパンフレットを買ったら表紙も中身も全部PP加工されてたのでさらに胸が熱くなりましたよ…GAGA様ほんといい仕事です✨

ちなみにパンフレットの中身は短い文章ですがモノホンの先生a.k.a生粋のヲタクが書いているので知らない人にはピンとこないものですが、知っているとクスクス笑えるどこまでもヲタク向けの代物ですw

バンクシーの"Love Is in the Bin"(a.k.a"Girl with Balloon")がズタズタになる前の18倍の値段が付いた2021年秋…いやはやアートとは?ですねw

この映画はアートとは?というアカデミックな側面とそれに絡んだマネーゲームとパワーバランス、そして何よりも大切な大切な『面子』がマホガニーのテーブルの下でナイフ合戦を繰り広げているようなそんなお話。

私この件全然知らなかったのですが英語タイトルがすごいですねw

"The Savior for Sale"

『サルバトール・ムンディ"Salvator Mundi"』を『救世主』と日本語に訳すならこのタイトルは『売却のための救世主』とでも?

うわあ、アメリカ人がフランス映画に付けそうなタイトルゥw

映画はありがたいことにアメリカ英語とイギリス英語とフランス語という構成。
とくにヨーロッパ人種の話し方が所属する階層によって違うのが見ものです。

ま、アジア人から見た欧州人種に対するイメージもいわばナショナリズムなんですけどね!
とかややこしい皮肉が言いたくなるほど豪快でトリッキー。

ロシアの富豪の件あたりまでは知られざる名画の秘密!みたいだったのに、いきなりマフィア映画みたいな様相を呈してきて最高でしたね。
ドキドキしたし開いた口が塞がらなかったw

スイス人のおっさん…1.5倍もふっかけてよくバレなかったな?!と思うかよくそれだけ値切ったな?!と思うかよくそれがバレたな?!と思うかですよね。

私は全部思いましたよほんとすごいw
あんなめっちゃ静かに大量に殺させてそうな人に刃向かって今ものうのうと暮らしてる度胸が凄い。
あのおっさん絶対殺される…。

最初にこの絵を買ってきたディーラーのおじさんは「知らないけど超楽しい」って顔してたしザザビーズのおじさんは「やられたけど儲かったからいいや」って顔してたしタイムズのおじさんは「もうおもろいから本物かどうかなんて永遠に分からなくていい」ってそれぞれどちらにしろ『得』をした人々は活き活きしてますよね。

ダ・ヴィンチ研究のプロ、ケンプ先生ですら「本物やと思う。でも違う可能性は否定できない」と断言できず含み笑い。

ただ事実のみを語ると

ナショナル・ギャラリー🇬🇧は『可能性あり』として展示しルーヴル・ミュージアム🇫🇷は『でない可能性あり』として展示をしなかった。

これぞ面子の刺し合い🗡

専門家の加えられる『修復』とはホンモノを導く正しい引き算なのかニセモノを作り上げる怪しい足し算なのか…その当事者たちが口を揃えてドヤ顔で

『知らね!だといいね!』

と言い放つ様は最高に混沌としていて大好物です。

そして一番他人事じゃないはずのサウジ皇太子に雇われた軽薄そうなフランス人のおじさんはこう言う

『ルーヴル・ミュージアムは3ヶ月かけて今の技術で最善の調査をした』

と。
"C'est la vie"を地でゆくユーモアと皮肉に憧れますよね。

マフィアが絡んできたら政治が絡んできたりもうほんと凄すぎて永遠に本物か偽物か曖昧なまま彷徨ってほしい!!

芸術の魅力ってこういうものなんじゃないんですか?
美しいことでも技術が卓越していることでもなく引き付けて止まないこと。
そして謎が多いこと。

探究心という名のアートへようこそ。


日本語字幕:松岡 葉子
Aya

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