イトウモ

リコリス・ピザのイトウモのレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
4.5
結局これは、キスしそうな男女がなかなかキスをしないというだけの話じゃないのか。

二人はデートに行くのか、下品なジョークはいつ言われるのか、ウォーターベッドは売れるのか、警察署から出られるのか、ガス欠トラックは家に帰れるのか、

オチの決まった小さなコントを、いくつもいくつもいきあたりばったり(に見える)かのように繋ぎ合わせて、いい歳してこんな子どもとその場その場で遊んでばっかりいていいのだろうか、という背徳感がある。

PTAはその小さなコントをつくる映像のクリシェをたくさん持っているのだ。
冒頭、ゲイリー(クーパー・ホフマン)はアラナをデートに誘おうとするが、そのナンパのタイムリミットは証明写真の列の進行によって決められているし、列が二人の動線をつくっている。鏡を使うとまるで時間が逆方向に流れ、二人の遊びが一瞬永遠に続くような気さえするが、そうはいかない。おしゃべりする二人を見据えるカメラの前を、もう写真を撮り終えた生徒が何度も横切っていくけれど、そうしてぱたんぱたんと画を途切れさせる運動がフィルムの映写そっくりでまずそれに感動した