てっちゃん

リコリス・ピザのてっちゃんのレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
4.0
PTA!PTA!ということで、PTA作品です。
もちろんPTA!ということもあったから喜び勇んで劇場へ向かったのもあったけど、Haimというバンドが大好き(本作で主演を務めたアラナハイムさんはHaimのメンバー。余談ですが、最新作も相変わらず素晴らしい!はよ来日して欲しいもんです。しかも本作ではハイム一家総出で出演しています。)なのもあって、さらに浮き足になって向かったわけです。

いつもの全く情報を遮断して向かったので、あるのはポスターのみ!
それでも確かなのはPTAであれば安心できるでしょうってこと。
そんな訳で様々な年齢層の落ち着いた方達が多いなかで鑑賞開始です。

観ていて少し肩透かしをくらったのは正直なところ。
全くの情報ゼロで行ったので「ザ・マスター」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」みたいな濃厚どっしり重厚作品かと思っていたからです(ポスターからそうはならんだろって感じですが。
というかPTA作品の常連でもあるダニエルデイルイスさんが濃すぎた。彼のパワーが凄すぎてダニエルデイルイスさんカラーになってしまうという感じでしょうか)。

お前さては不満だったのか?と聞かれると、(自分のせいで)思っていたものとは違っていましたが、すごく力が抜けていて、こういうPTA作品もいいなと思いました。

とにかくかわいくて、じれったくて、勝手にやってろよと思ったり、はらはらしたり(ここがすごく煽ってくるので、落ち着かない気持ちにさせてきます)、70年代の小ネタ(勉強不足なのでそのあたりの背景が全く分からなかった。実在の人物や出来事を描いているのだそう。)当時のファッション(このファッションが今見たら新鮮でとてもかわいい)ありの、上記のような濃厚PTA作品と比べると、すごくライトな仕上がりなんだけど、さらりと冒頭で長回しをやったり、人物の動き(感情的なところでも)にさらりと合わしてくるあたりに並はずれた才気を飛ばしてくるので、やっぱりPTAだよなってなるのです。

本作はボーイミーツガール作品であるんだけど、主人公のゲイリーは15歳、アラナは25歳、歳の差男女のちょっと変わった恋物語である。

ゲイリーは子役あがりで若いのに商売才能があって、ものすごく自信家。でも自身の子役としての限界も見えてきている年頃。

アラナは自分のやりたいことが定まっておらず、ゲイリーに押されていろいろと挑戦する中で、このままでいいのかを模索している(なんせ15歳とかの子供といるわけだし、「なにやってんだろ」ってなるわね)。
実家は熱心なユダヤ教。そこにもどこか抑圧されている印象。

その2人の関係性や、それぞれのショートエピソードがいくつも合わさって(それぞれの話がいちいち良いんです)、ああいつまでもやっていてくれ、、と観ていて思う感じ。

なんでもない日常を切り取っているだけなのに、なんでこんな面白いんだろう。
見せ方とかこだわりを感じるからってのもあるんだけど、脇役の人物たちがいちいち魅力的だからってのが大きいんだろう。

特にブラッドリークーパーさんね。
最高過ぎる。クレイジーすぎる。ギラギラしすぎてる。劇中でもナンパしちゃってるし。

故フィリップシーモアホフマンさんの御子息クーパーホフマンさん、これからどんな役者さんになっていくんだろう。演劇の方面に進んでいくのか、そうでないのかは分からんけど、PTA作品にこうして出演することに御縁を感じるし、映画ファンとしては大変喜ばしいこと。

アラナハイムさんはPTAと以前からとても親しい仲らしく、PTA曰く「ホアキンフェニックスとダニエルデイルイスと同じ才能を感じる」とのこと。
大変なお褒めな言葉なんだけど、本作観た人なら、その通り!って思うんじゃないかしらってくらいに彼女の持つ空気感や雰囲気が今までにない感じで、めちゃくちゃいい。
インタビュー記事を読んでも、その関係性が素敵すぎるし、本作で主演を務めるまでの流れが語られているので、おすすめです。

PTAは、”暗い時代だったので20年前から作りたかったこの映画を作るときが来たと思った”と語っており、その言葉を意識しながら観ると、彼のあたたかみというか人間性すら感じることができる、そんな作品なのかなと思いましたとさ。
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