kohei

リコリス・ピザのkoheiのレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
4.7
ゲイリーとアラナのふたりに同期しているようなカメラワークが愛おしい。カメラは走り続けるかれらを迎えることはあっても追いかけることはせず、同時に動き出し、同じ速度で走り、突然の失速や後退に振り落とされたりする。振り落とされるたびに一方からまたどちらかが走り出し、もう一方を捉えんとする。でもこのふたつの流動体はなかなか掴みきれない。というかまたすぐにどこかに走り出していく青春の衝動。だからこそかれらが合流し、カメラの横を過ぎ去っていく(そのあとを追いかけない)ラストシーンがたまらなく美しいと思った。走り続ける身体である映画が、スクリーンを飛び越えていった瞬間。人の感情は流動し、他者とすれ違い続ける生き物だけど、あのときだけ同じ方向を向いていたならそれでいいと思わせる魔法の越境。
kohei

kohei