はるな

リコリス・ピザのはるなのレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
5.0
ポール・トーマス・アンダーソンの映画はいつも、観てる最中色んな感情になるのでどのレビューも「分かる」と納得してしまいます。『リコリス・ピザ』も多くの人が言うように分かりやすい筋道の立った一本のストーリーというよりかは散文的で一見すると不要に思えるエピソードが多く途中何度も話の軸を見失いそうになります。しかし、そんな不要と思えた時間も映画のラストに至って思い返してみると懐かしく記憶の中で輝き続ける美しい瞬間のようでした。映画の"余韻"とはよく言いますが、観賞中に劇中のシーンを懐かしく感じるような映画体験は過去になく、クライマックスで走り出した2人にまさにその時思い出していた瞬間がフラッシュバックして重なるシーンは思わず息を呑んでしまう程でした。以前、雑誌ユリイカで読んだ『インヒアレント・ヴァイス』公開時の監督インタビューが非常に印象的でした。歌手のニール・ヤングが撮った短編映画『Journey through the past』を指し自身の目指す映画作りについて「たった1シーンだけでも最高に美しい瞬間があれば、映画はそれで良い」というようなことを語っていて「はぇ~、PTAでもこういうこと言うんだな~」と良い意味で驚き妙に納得したのを覚えています。
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