どーもキューブ

リコリス・ピザのどーもキューブのネタバレレビュー・内容・結末

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

ポルトーマスアンダーソンのハリウッドグラフティ



脚本監督ポールトーマスアンダーソン。



私の大好きな監督、ポールトーマスアンダーソン(以下「PTA」と略称で記す)

鑑賞履歴は以下どうぞ。
PTAの服装をつくる夫婦の愛について「ファントムスレッド」


PTAの宗教と迷える人々「ザ・マスター」

ポールトーマスアンダーソンの探偵もの。「ロンググッドバイ」風味で。リコリスピザは本作の系譜。「インヒアレント・ヴァイス」

 今までダウナー系、ネガティブな人々を撮ってきたポールトーマスアンダーソン監督。

新作は、青春映画の感じ、題名「リコリスピザ」、明らかな作風変化。あと好きな映画監督の青春映画で人柄が出るという特徴があると思っている。

さながらタイトルきくとピザ屋の物語かと思っていた。調べるとPTAの行ってたピザ屋でかかってそうな曲の映画のイメージとピザ1個も関係ない不親切さ(苦笑)

ツィッター情報一切遮断でみてきた。2022年楽しみにしてたやつ見に行ってきた。




まず、超大前提、主人公になりづらいふたりがずーっと出る。美男美女でない。だけど冒頭の出会いからつかまれる。

見終えて確認した本作のボーイ、男優は、PTAの常連亡くなったフィリップシーモアホフマ息子、クーパーホフマン。いわれたら確かに似ている感あり。けど言われないと判らなかった。大柄な若者にしか見えなかった。

調べてわかった2人の関係性。
クーパーくんの成り上がり物だ!

ヒロインは、アナハイム。ロックバンドの方。PTAがPVを演出した縁からのもよう。

スタスタと歩く女性。

「クシいかがっすか?」

とやる気ない売り子の掛け声。学校の写真撮影の売り子らしい。その娘をナンパするひとりの男、果敢にそっけないが喋り続ける。いつしか嫌そうに振り向く彼女、何よこのガキ!からふたりのリコリスピザなポールトーマスアンダーソンの青春映画がはじまる。

まず見始めてPTAの監督のながれでいうと「ブギーナイツ」タイプの映画。立身出世系の映画。はじめ学園ものかなと予想したら違った。

タランティーノの「ワンハリ」系の映画になっていく。映画や俳優の舞台裏、本作では子役だ。

中盤は「ブギーナイツ」のような商売繁盛系そこに毒々しさ満載の人々が絡みつつ進む。

中盤のブラッドリークーパーがでるあたしから、青春映画がぐうっと圧力かかり、映画の歯車が回り出し、2人の関係も忘れながら、違う様相に見え、時間は経過していく。

ブラッドリークーパーに見えなかったのは勿論、物凄い緊張圧をかけてくる人、PTAムービーでは恒例の悪くて危害圧力しかない危険人物だ。だけど本作のはけぐあいとしてのブラッドリークーパーの出番終焉を見逃すな!ここらへんも上手だった。このネタだけで引っ張れそうな所をなにもなく終わらせるストーリーテリングにも唸った。実際そんな感じだったろうね。きっと毎日乱痴気騒ぎ、金ジャブジャブ、素行ド不良、犯罪一歩手前スレスレみたいな俳優だ。今もいるであろう、こういうかた。

爆笑出演のショーンペンも必見!ショーンペンじゃなくても良さそうだが、めちゃめちゃなショーンペンなんでお気に入りショーンペンの怪演ぜひ!

レア出演のミュージシャン、トムウェイツのそこらの酔っ払いを見逃すな。戯言むちゃくちゃだけど。トムウェイツもPTAだから出た系の出演。ジムジャームッシュ組のトムウェイツだ。

入口は、俳優の俳優映画だ。かつ出演は、美男美女じゃないし、かなり感情移入させないエピソード満載で迫り来るPTAのハリウッドグラフティ。先が相変わらず全く読めなくて、そんな意味でめちゃめちゃ見たことないオリジナルな青春映画の誕生だった。
つまらない、手を抜いたなんてレビューもわかる。が、本作の何気にサラッと瞬間セットに物凄い金かけるところは、PTA映画の醍醐味。学園祭ぽいところのセット必見の作りこみ学園祭セット。


ラストは珍しく多幸感チックで嬉しい気持ちで劇場をあとにした。

確かにサントラが欲しくなるジョニーグリーンウッドの選曲と音楽だった。



さて
ポールトーマスアンダーソンの青春映画、ハリウッドらへんのヤングパートナーカンパニー物語
PTAファンはぜひ!


フィルマークス版追記
万人が楽しめるわくわく青春映画、全力のカンパニー立ち上げ成功ものに終始せず、むしろ失敗したり、踏み外したり、フラフラしたところに力点を置いている。全然みてて、見づらい、不親切、むしろ面白くないエピソードの羅列にも一見みえる。

ふたりの関係性も本当にストレートじゃなくて素直じゃないのよね、このふたり。いらいらしながら、半ギレしながら、家族とギクシャクしながら、ふたりが歩む。逆にそこら辺リアルにみえる。

ある意味灯台もと暗し的ラブストーリーの王道なんだが、ひと筋なわでわないPTAらしさブリンブリンのとってもとっつきにくい、みやすくない青春映画だ。
そこが魅力だ。本作のおもしろすなさこそ魅力とみたい。そこがリアリティ。だから鑑賞後のニュアンスは、「アメリカングラフティ」に方向性が一種にみえた。

素直なりゃーいいじゃんを
ねじ曲げまくるPTAに
夢中になりながら
どこに着地するのと思いながら

駆け出すふたりに今までのおもしくないエピソードが一気に反転するウキウキを感じた見たことないリコリスピザ体験でした。

わたしはポールトーマスアンダーソン監督が改めて大好きだあーーー!
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