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リコリス・ピザの1000のレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
4.3
いい映画だ。『ファントム・スレッド』に怒り狂ってから早4年、満を持してPTAが帰ってきた。思えば大したストーリーではないが、画面がバッチバチに動くので、しっかり見せつけられあっという間に終わった。
男女の愛憎、腐れ縁という主題は『ファントム・スレッド』と共通だが、後からこんなにもPTAらしい作品を作るなら、なおさらあちらはなんだったんだという感がある。

絶妙にどこへ向かっているのか分からない、序盤のとっちらかった叙述は『インヒアレント・ヴァイス』の味わいと似ていた。キャラ濃いモブが次々現れては消え(ショーン・ペンとトム・ウェイツは二人で勝手に別の映画をやっていた)、なかなか掴みどころが無かったのだが、ブラッドリー・クーパーと大型トラックが大暴れしてからようやく話がまとまっていく。あの前後はかなりスリリングだった。
ニキビ面のイキってる少年と、毎日くすぶっている女。最初から最後まで嫉妬とマウントにまみれた凸凹コンビだ。お互いがお互いにマウントせずにはいられないのだが、根本的なところで相手に対する恐れのようなものがあり、その絶妙な力関係が本作の主な見どころになるだろう。

画がほぼそのまま『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』なのはいいとして、フィクションとノンフィクションの映画的な扱いについてはあちらのほうが上手だった感はある。後攻は不利だな。
面白い映画ではあったが、PTAには面白すぎる映画を期待してしまう。
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