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クレーン・ランタンのsidepocketのレビュー・感想・評価

クレーン・ランタン(2021年製作の映画)
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東京国際映画祭にて
人間って自分の想像の範疇におさまるものしか評価できないんだなぁ。この作品には点数がつけられなかった。
アゼルバイジャンの森林、広大な原野、先も見えない雪原、廃墟から望む街、そして油井と向こうにそびえるビル群。たびたび繰り返される、詩的な会話(もはや会話の体をなしていないことのほうが多く見えたが)。
高度に抽象化されすぎていて、もはや何を伝えたいかも観客にとっては判らない。劇中の会話でもあったが、もはや考えることをしないで感じたほうがいいのかもしれない。
観客に解釈をすべてぶん投げているという批評はごく自然なものだろう。しかしながら話者の瞳を超クローズアップショットで抜くフレーミング。効果的に使われるツル(クレーン)の鳴き声。窓や扉から向こう側を覗くようなショット、水や油泥を鏡のように利用したショットなどメタファー自体は至るところに散りばめられていたのではないか、というのが私感。といっても一片たりとも掬えなかったけれど。
冒頭の油井に備え付けられているクレーンとツル(クレーン)がアナロジーなのは言わずもがなだが、繰り返される機械的な動作がどこか空虚さを感じさせて本作の退廃的な雰囲気と符合していた。
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