福福吉吉

オマージュの福福吉吉のレビュー・感想・評価

オマージュ(2021年製作の映画)
4.0
◆あらすじ◆
映画監督のジワンはヒット作を出せず、私生活では夫と息子の生活費に困る日々を過ごしていた。そんな中、彼女に60年代に活躍した女性監督ホン・ジュウォンの作品「女判事」の修復作業を依頼される。ジワンはカットされていた部分のフィルムを求めて関係者に当たっていく。

◆感想◆
過去に賞を受けるもヒット作が出ず苦しんでいる女性映画監督が60年代の女性監督の作品の修復を通じて女性への差別や偏見、そして妻としての在り方を感じ取っていく姿を描いており、先人たちの思いや苦労が現在の自分に繋がっていることを強く感じさせる作品になっていました。

ジワン(イ・ジョンウン)はヒット作が出せずに苦しんでおり、私生活でも家庭の生活費や妻としての役割の重みに苦しんでいますが、性格が基本的に明るいので重い雰囲気にならず、四苦八苦しながらも仕事に取組む彼女に感情移入できました。私は男性ですが、女性の方なら一層感情移入できると思います。ジワンの夫はジワンに対して監督よりも妻の役割を重視してほしいという気持ちがあって、彼女に対して冷たさを感じますが、ジワンはジワンでいきなり家庭内別居を始める気持ちの強さがあって面白かったです。

ジワンは60年代の女性監督ホン・ジュウォンの作品の修復の仕事を受けたことで、当時の女性監督としての地位の低さや不利を関係者の話を通じて感じていきます。ストーリーとして静かながら関係者1人1人がジュウォンとの思い出や映画に対する思いが語らていく展開は観ていて興味深くて楽しかったです。

また、映像として朽ちた映画館の天井の穴から光が射すシーンやジュウォンらしき女性の影が現れては消えていくシーンなど美しさや面白みがあって良かったと思います。

ラストは色んな経験を経て、一杯苦労をしながらも前を向くジワンの姿が心に沁みました。

女性監督の苦労を描く作品ながらその根底には映画制作に対する愛情が感じられて、シーンの一つ一つにこだわりを感じさせるものがありました。ジワンを演じたイ・ジョンウンさんの個性が本作にマッチしていて優しい雰囲気だったこともあり最後まで楽しく観ることができました。

鑑賞日:2025年4月11日
鑑賞方法:CS ムービープラス
(録画日:2024年6月9日)
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