Gena

マイスモールランドのGenaのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
5.0
試写会にて。前情報をあまり得ずに行ったので、「クルド人」の「難民」の映画なのかなと思ってたら、ものすごく期待を裏切られた。

難民問題を主題にしつつも「難民映画」だけでない、サーリャという一人の日本に生きてる女の子を描いた珠玉の作品だった。

主題とは直接的には関係のない描写を重ねた監督のセンス、倫理観、思慮深さに感嘆してしまった。これってすごい才能で、今の日本の映画界にまさに必要なものだよ。ファンになったので、これからも監督作を応援します!

記憶が新しいうちに素晴らしいなと思った演出・設定をメモしておきます。

アイデンティティの問題、対外的な説明の難しさなどは言うまでもなく素晴らしくて、

・説明的になりすぎない、自然な会話の中でのクルドについての説明
・公園でTikTok撮影、大学の推薦枠を友人にとられるなど、リアルな学生生活
・生活に困窮した先にあるパパ活(演技がうますぎて気持ち悪かった)
・父親に結婚相手を決められそうになるが、どんなに困ってもその相手に頼りたくないという意志
・長女であるサーリャと次女のアイデンティティ、責任意識の苦しい差(次女の描写がとてもリアルでこれもまた素晴らしかった)
・ソウマくんの素朴な素敵さ。キスやハグを迫るのではなく、ただ手を握るだけの優しさに私泣いた。
・俳優さんたち。サーリャ役はviviモデルというからちょっと身構えちゃったんだけど、ペルシャ語がお上手で、本当にルーツを持つ俳優を配役してくれていたのが当事者の方々を尊重していてよかった。お芝居もとってもよかった!!
ソウマくんは、かつての柳楽優弥的なお姉さんとゲイを虜にするような素敵さで、嫌味なく真っ直ぐでまぶしかった。
・平泉成の本気ではやる気ない弁護士役
彼は劇中でビザが失効した家族に「健康に気をつけて」という。これは医療費が全額自己負担2なるからということなんだけど、現実では自己負担100%でも診てくれない病院がたくさんあるらしい。なんでも200%、300%請求する病院も多いんだとか。また生活保護も対象外。

難民認定率の低さ、入管での凄まじい人権侵害、仮放免の残酷さ、すきあらば改悪されそうな入管法。
一体誰がここまで難民を徹底的に嫌っているんだろう。一個人の私に何ができるかを本当に考えさせられた。
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