ゆめちん

マイスモールランドのゆめちんのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
4.5
マイスモールランド
 
恥ずかしながら、日本における難民の実情について知らないことばかりで、国を追われて日本に来た難民が政府からどのような扱いを受けているのかも含め、本作から様々なことを学びました。
 
クルド人の家族とともに故郷を逃れ、幼い頃から日本で育った17歳のサーリャ。現在は埼玉県の高校に通い、夢は小学校の先生になることで、大学進学の資金を貯めるため、父親に内緒でコンビニでアルバイトをしていた。
 
日本における難民の実情を、時間をかけて丁寧に取材をし、それらを忠実に反映させた作品という印象を受ける。現実の社会問題に重きをおきながらも、共感しやすい青春物語に落とし込んでいるところにセンスのよさを感じる。
ただ難民問題だけに特化せず、クルド人の風習や伝統にこだわる親世代と、日本で育った子供世代との価値観の違いなども鮮明に描き、興味深く思えた。
 
日本では、クルド人に限らず難民申請はほぼ却下される。却下されれば在留資格を失い、労働が認められず生活ができなくなる。そんな理不尽すぎる政府の決定にサーリャたち家族は従うしかなく、どうすることも出来ないもどかしさに、観ていて怒りが込み上げてくる。
 
追い詰められても決して恨み言を言わず、耐え忍ぶサーリャの姿に心揺さぶられ、"頑張って" と励ます周囲の人に、"もう頑張ってます" と応えるサーリャの心中を察するだけで涙が止まらなかった。
 
サーリャ役である嵐莉菜の、繊細な表情で魅せる抑制された演技が何より心に響く。相手役の奥平大兼も、程よい距離感でサーリャを優しく見守る聡太を好演。二人の爽やかさがあるからか、微かな希望を感じさせ、鑑賞後も余韻を残してくれる。
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