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マイスモールランドのギルドのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
4.3
【受難を乗り越えて継承される人種の尊厳】
■あらすじ
17歳のサーリャは幼い頃から日本で育ったクルド人。
「クルド人としての誇りを持て」という父の教えのもと、毎日クルド語の祈りを捧げている。
そんな中でサーリャは日本人の少年少女と過ごして日本人らしく育っていた。
そこで自分の生い立ちについて話せる親友にも出会えたけど、ある日サーリャ家族に難民申請が通らないことが判明。
在留資格を失うと居住地から出れず働けない。
更に父親が入館施設に入れられ…

■みどころ
在留資格を失ったクルド人一家の「今まで日本人と同じ生活してたのに唐突に出来なくなったの何でや…」な矛盾を描いた話。

矛盾じみた日本社会で人種が生活を分断してしまい、その中で人種の尊厳が揺れ動く姿を淡々と描く。
本作は国を持たないクルド人の視点を日本社会に現出した話だが、象徴的な魅力として「コミュニケーションをする手段の変化」だと思う。

そこには「日本人」として育ったクルド人が「日本人」としての振る舞う姿や「クルド人であるが故に不当な扱いを受ける尊厳に対する怒り」が存在し、母国語に対して日本語でやり取りする姿や翻訳する姿が印象的でした。

映画の中でクルド人の母国はどこにあるかと聞かれた父親は心の中に存在すると言う。
映画を通じて「尊厳」と「日本の制度・世俗」との戦いを"受難"という形で捉えていき、"矛盾"を顕にするだけではない"尊厳の継承"に昇華させたところが素敵でした。

この"力強さ"と転んでも立ち上がろうとする姿瞬間瞬間に美しさがある、そんな映画。
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