るるびっち

マイスモールランドのるるびっちのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
3.6
古臭い昭和ドラマの匂いがした。
出来の良い娘にしわ寄せが集中する所や、異端者に対する日本人の反応など。
娘に対する父親の頑迷さも、割と昭和な感じ(民族の伝統意識が強い分、慣習的にもなる)。

しかし、それは監督の感覚が昭和だということではなかった。
むしろ日本人の感覚自体が、昭和から変化していないのだ。
臭い物にフタとか、腫れ物に触るよう接するとか。
遠巻きに見て、関わらないようにする消極的逃避型差別。
クルド人に限らず、母子家庭、混血児、部落、ハンセン病、前科者、LGBTQ、障害者etc
マイノリティや異端者を排除するのは日本にはお馴染みで、昭和のドラマどころか時代劇でもよく見る構図だ。
つまり日本人の本質は鎖国主義、ことなかれ主義なのだ。
今だって、反マスク・反ワクチンはネットで叩かれている。
生活保護者にだって厳しい国民が、難民に優しいハズがない。
異端者を寄ってたかって叩き潰すのが、あっぱれな島国根性なのだ。
不寛容で心の小さい国民性。マイスモールランド・ジャパン!

市役所が突然なぜ申請却下したのか、役所側の不条理さを引き出すためにもっと突っ込んで貰いたいところだ。
けれど本作は17歳の視点から描かれているのであり、役所の不透明さも含め、日本という国の不可解さを描くためにも詳細は不明な方が良いのかも知れない。
少女には奇妙に見えるという構造で作っているのだろう。
少女には、ナルシス気分で尾崎を熱唱するオヤジも奇妙だろう。
「ボク~がキモイであるために~🎶」ww

国境と言う感覚は、島国の日本人にはない。
しかし埼玉から出てはいけないとか行動規制される難民には、東京と埼玉で明らかに国境が引かれるのだ。
見えない国境は日本にもあったのだ。
見えない差別も分断もある。
いや見えないのではなく、無関心で見ようとしないのだろう。

日本は移民という言葉をタブー視している。
しかしコンビニや深夜チェーン店など、外国人が多く働いている。
働き手が足りず外国人を雇っているが、彼らは技能実習生という名目で移民としては認識していない。
ウクライナからの人々も、あくまで一時的な避難民という名目で難民として取り扱わない建前。
この辺の言葉の誤魔化しをやり続け、問題を先送りにしたり問題の本質も誤魔化して、我々が見ようとしない所で悲劇が行われている。

最近は街で、野良犬を見ない。
野良犬は保健所で処分される。クリーンな街づくりのためだ。
テレビでカワイイ子犬の映像を喜んで見る一方で、自分達の知らない所で処分される命に対して日本人は無関心だ。
何れ、クリーンな街からホームレスも見なくなるだろう。
同様に、難民たちも見なくなるかも知れない。
行政がしっかり仕事をすると、街はクリーンになる。
行政の責任以上に、日本人の無関心が引き起こしている結果なのではないか。
昨年の超過死亡は6万人程だという。コロナ死者は年間1万人程だ。
今年は、三か月で既に3万人も超過死亡が発生している。
マスコミは報道しないし、国民は興味もない。
無関心な所で、ひそかに消えていく命は多い。
それが日本。大きな無関心と小さな命の国だ。
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