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マイスモールランドのmaroのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
4.0
2022年日本公開映画で面白かった順位:29/91
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆

ドキュメンタリーのようなフィクションでとても見ごたえのある映画だった。
これはいろんな人に観て欲しい。
内容的には今年2月に観た『ブルー・バイユー』に近いかも。

難民というと、遠い異国の地の出来事かと思う。
なぜなら、単一民族というと正確ではないかもしれないけど、日本は他の国と比べたら圧倒的に同じ人種しかいないというイメージがあるから。

でも、この映画で描かれていることは、今実際に日本でも起きていること。
今回焦点が当たっているのはクルド人の家族。
クルド人というのは、「国を持たない世界最大の民族」と言われている。
クルディスタンという地域はあるものの、それはトルコ、イラン、イラク、シリアの4カ国に分かれており、独立した国家じゃない。

埼玉県にも2,000人ほどのクルド人が住んでいるそうだ。
映画で描かれている4人の家族は、難民申請が不認定となり、生活が一変してしまう。
在留資格を失うと、居住地である埼玉県から出られなくなり、働くことも禁止される。
医者に行っても保険が効かない。
そんな状況でどうやって生活すればいいのかって話だ。
なお、クルド人の大半はトルコ国籍。
難民認定するにはトルコ国内で政治的迫害があると認めることになるため、トルコとの関係を損ねないために、日本政府は難民認定しないらしい(合ってる?)。

さらに追い討ちをかけるかのように、父親が不法就労で入国管理局に入れられ、サーリャ(嵐莉菜)もバイト先のコンビニを辞めざる得なくなった。
それでも生活のためにお金は必要で、パパ活に手を伸ばそうとも。。。
まだ遊びたい盛りの17歳。
受験に恋にと、本来なら享受できたはずの青春が、一瞬にして闇の中へと消える。
何とも胸がえぐられるような話だ。

終盤の父親とサーリャの会話はものすごく感動的だった。
家族を守るために父親の出した解決策の自己犠牲感と、そうしてでも家族を守ろうとした姿に目頭が熱くなる。

そんなわけで、テーマが難民ということで、これまでの邦画ではなかなか目にしない内容だったから、それだけでとても興味深かった。
この先どうなるかわからない不安を抱える17歳の主人公サーリャを演じた嵐莉菜の演技も、初めてとは思えないほどのクオリティ。
しかも、この4人の家族ってリアルの家族ということにも驚きだ。

今後、いろんな国の人が日本を行き来することになる世の中になるだろうから、こういった国際的なテーマを持つ邦画も増えるかもしれないなあ。
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